40歳で顔面マヒになった女性が歩む"大胆人生" 耳下腺がんになった看護師が起業し目指すもの

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写真左は荒井里奈さん(左)と柴田敦巨さん(右)。右は柴田らさんが関わる「猫舌堂」とそのカトラリー(写真:左は柴田さん提供、右は猫舌堂HPより)

国立がん研究センターの統計によると、2016年にがんと診断された約100万人中、20歳から64歳の就労世代は約26万人。全体の約3割だ。

だが、治療しながら働く人の声を聞く機会は少ない。仕事や生活上でどんな悩みがあるのか。子どもがいるがん経験者のコミュニティーサイト「キャンサーペアレンツ」の協力を得て取材した。

今回は、耳下腺(じかせん。両耳の付け根近くにある大唾液腺)がんの再発後、看護師からの意外な転身を実現した柴田敦巨(あつこ)さん(45)の話です。

顔面マヒで力が入らずに食べこぼす悔しさ

柴田さんは40歳のときに、耳下腺がんの切除手術をした。その際に顔面神経が傷つき、顔の左側にマヒが残った。耳下腺は顔面神経と隣接するか、重なっているためだ。

左のまぶたは当初閉じられなくなり、まばたきもできず、左目だけが乾燥して涙が止まらなかった。左の口角も下がり、自力で動かせなくなった。2014年の話だ。

「飲み物は口の右側にストローをくわえて、マヒした唇の左半分は自分の手でつまみあげて飲んでいました。そうしないと下がった唇の左半分から、こぼれ出てしまうためです。食べ物は口の右半分だけで噛んでいましたが、口を大きく開けられなくなり、食べこぼしが増えました」(柴田さん)

以降、大きめのハンカチをつねに膝にかけ、口のまわりを汚す度にテイッシュなどで何度も拭きながら、食べるしかなかった。

「自分が食べる姿を他人に見られるのが嫌になり、病院の食堂には行かず、お昼は1人で食べるようになりました。以前は同僚と飲みに行くのも大好きでしたが、外食も家族とだけ行くことにしました」

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