そう聞いて、彼女の小学校時代のエピソードが思い出された。
「担任の先生から、『好きな芸能人は誰ですか?』と聞かれて、ほかの子は中森明菜とか、シブがき隊とか答えているのに、私が『研ナオコ』と答えると、みんながドッとウケてくれてね、しめしめと1人ほくそ笑む。そんな感じの子どもでしたね、人と違うことを恐れないっていうか」(柴田さん)
荒井さんも浜田さんも東京ディズニーシーでの、“ハンバーガー・チャレンジ”の思い出を共有している。
改めて思い浮かべてみる、かつて食べこぼす姿を見られるのが嫌で、病院の隅で昼食を1人で食べていた柴田さんを。浜田さんと初めて食事をしながらめっちゃ楽しいのに、なぜか涙をこぼした彼女のことも。
「食べる喜びは生きる力になる」
「外食のとき、私は黒系のシャツやブラウスが多いですね。決して着やせして見せるためじゃなくて、食べ物や飲み物をこぼしても、うまくごまかすためです。しかも安いやつね」
柴田さんがそう話しながら、自ら手書きの「あるある!」カードをZoom画面に掲げると、ほかの2人も手書きの同じカードを挙げた。すかさず柴田さんが「『あるある!』、3枚いただきましたぁ〜!」と声を上げ、高らかな笑い声と笑顔が広がった。
6月下旬の昼下がり、猫舌堂主催のオンラインのランチミーティング。柴田さん以外に、前出の荒井さんと脳腫瘍(しゅよう)経験者の男女2人。脳腫瘍や脳梗塞でも、顔面神経の一部がマヒして、口が開きづらくなり、食事に支障が出る人がいるという。
脳腫瘍を経験したNさんは、当日の体調によって目が見えづらかったり、口が開きづらかったりすると明かした。
ただ普通に食べること。そのために必要になる膨大な労力と時間、そして気力。社会から取り残されたかのような寄る辺なさが、Zoom上で時おり笑いに変わる。「あるある!」や、「そだね(そうだよね)!」などの手書き文字がおどり、互いに前向きなエネルギーを送り合っていた。
ランチ終了時、Nさんが7割ほど食べたグリーンカレーの皿を少し自慢げに見せながら、「こんなに食べられたの、久しぶりです」と両頬をゆるめた。「食べる喜びは生きる力になる」1時間半だった。
「ビジネス以上に、その人が本来持っている力を引き出すお手伝いができる、そんなカフェをつくることが今後の目標です」
後日、柴田さんははっきりと言い切った。
がんと共に生きていくこと。その拠点になるカフェではiisazyでおいしい料理を食べられて、心身ともにくつろげるリンパマッサージなども提供するつもりだ。
約24年間の看護師生活から起業家へ、さらに病院ではできないサービスを提供できるカフェ経営者へ。1度きりのいのちで2人分、3人分の人生へ。柴田敦巨、通称あっつんは仲間たちと向かっている。
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