長男と3人で治療方針を聞いた理由
がんになったことを子どもに伝えるのか、伝えないのか。
親によって判断が分かれる。伝えるにしても、まずは親が治療の方針や、退院の見通しなどを医師から聞いたうえで、理解できると思われる年齢の子どもに慎重に伝える。筆者もそんな話を何度か聞いてきた。
自治体職員の田神さんのケースはめずらしい。靖子さんはステージ3の十二指腸がんと告知されたが、その具体的な治療方針を主治医から聞く際、夫の隆弘さん(仮名、47)と長男(16)を同席させたからだ。
主治医はレントゲン写真を指差しながら、靖子さんに説明したという。手術時間は12時間を見込み、十二指腸を切除して胃と小腸をつなぐために、術後の経過がよくない症例もあると語った。2016年10月のことだ。
長男には女性医師が別途、必要に応じてボールペンで図を書き、彼によりわかりやすい説明を加えてくれた。靖子さんは、子どもに伝えないということは最初から考えなかったと振り返った。
子どもたちは当時、18歳の長女、16歳の長男、10歳の次女の3人。
「長女は生真面目なしっかり者なので、かなりショックを受けてしまうかもしれないと心配しました。一方で、長男は何事もマイペースで楽観的。ですから、そんな長男に医師の説明を一緒に聞いてもらい、彼からさらっと伝えてもらったほうが、姉妹の動揺も少ないだろうと考えたんです」
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