渋澤 資本市場が短期指向になっているからね。四半期ベースの決算だと、ますますその傾向が強くなる。
藤野 アナリストもファンドマネジャーも、経営者に質問する時、四半期ベースの質問しかしないんですよ。誰も長期的な経営戦略に興味を持とうとしない。これは本当に由々しき事態です。しかも、その傾向がどんどん強まっています。
四半期決算の正当化は、世界の潮流から周回遅れ
渋澤 四半期レポートを必要としているのは、ランキングを競うアナリストくらいかもしれないですね。
中野 まあ、でも、とにかく、企業にはここで勇気を出してもらわないと困ります。経済的にもデフレ経済からインフレ経済に移行しつつある局面ですから、インフレ前提の経営にリセットして投資をしないと、乗り遅れてしまう恐れがあります。
渋澤 先日、経済産業省が「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築」プロジェクトの中間論点整理を発表しました。私も参加した研究会で、通称、「伊藤レポート」と呼ばれているのですが、この中で四半期決算に対する問題提議が行われています。
このレポートに対しては投資家側から、不満の声が上がったと聞いていますが、要するに、適時開示の必要性は世界的な流れであり、四半期決算への問題提議は、世界の流れに逆行するという批判です。ただ、これは現在の世界で行われている議論の周回遅れのものだと思います。情報開示の回数を増やすから、情報や開示の質が高まるというわけではないですからね。
藤野 それだけ短期投資で適正化された投資家が、日本には大勢いるってことですよ。
中野 四半期決算は適時開示という意味でスタートしたわけですが、どうも投資の短期指向を助長するだけのものになってしまったようですね。
渋澤 5月病って、期待が外れた時に起こるじゃないですか。新人で会社に入ったばかりの頃って、夢や希望をたくさん持っているわけですよ。なかには頑張って、会社を変えてやろうなどと思っている新人もいるでしょう。
ところが、実際にその会社に入って、1か月程度が過ぎたところから、「ん?なんだなんだ??」ってことに、いろいろ気づくのでしょうね。一方、会社はリスクを取りたがらず、何もしない病になっている。経営もただひたすらマニュアル化されている。そんな現実を目にして、新人の最初の想いがさめてしまい、5月病にかかるのです。
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