「脳腫瘍で別人格」40代男性を支えた妻の受難 夫の介護と子育てをしながら公務員になった

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「『障害だから』と思い、数カ月は我慢をしていましたが、まるで経済的DVを受けているような状況に、ついに私の堪忍袋の緒が切れて、夫と大げんかになりました。そして夫の復職を機に、家の通帳とカードを返してもらいました」

夫は2016年6月、約1年ぶりに復職した。

首絞め・羽交い締め・警察沙汰にも

ところが復職後、夫の暴言や暴力がエスカレートしていく。

朝起きたばかりの、脳や身体が元気なうちは比較的穏やかだが、仕事で疲れて帰宅する頃には暴言や暴力が激しくなる。

きっかけはいつもささいなことだ。例えば、次女が苦手なピーマンを残したら、「お前のしつけが悪いからだ!」と怒り出し、少しでも反論しようものなら、ひどいときは首絞め、羽交い締め、腕をつかんで振り回す、抱え上げて床へ落とすなどの暴力に及んだ。

暴言や暴力は、娘たちにも振るわれた。「塾へ行きたい」と言う長女に怒り、首を絞める。次女が夕食を残したことに怒り、背中に飛び蹴りする……。

「私たちは、数えきれないほどの暴言を浴びせかけられてきました。私には、お前のせいで脳腫瘍になった、お前は母親失格だ、俺を監視するな、お前と結婚して俺の人生台無しだ!など。

長女には、誰に学費を払ってもらってると思ってるんだ、お前みたいな女は結婚できんぞ、ちょっと勉強ができるからって調子乗るな!など。

次女には、お前はほんと勉強ができないな、お前は発達障害か、お前みたいなバカに塾行かせてやってんだ感謝しろ!など……。暴言だけでなく、対応に困る理不尽な要求もあり、1日働いて帰宅した後の介護は、精神的にも体力的にもキツくて困り果てています……」

夫は暴言や暴力をふるった後も、決して謝らない。夫は自分以外の人を思いやる気持ちや共感する力をなくしてしまっていた。

新田さんは、激高した夫に恐怖して警察を呼んだり、22時過ぎに近くの交番にパジャマのまま裸足で助けを求めたこともある。

子どもの前で夫婦げんかをし、警察が介入したことから、「子どもに対する精神的虐待」ということで、児童相談所の面談を受けたこともある。児童相談所から連絡があったときも夫は、「お前が警察に電話したせいだぞ!」「お前が娘を虐待したんだ!」と怒鳴った。

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