「脳腫瘍で別人格」40代男性を支えた妻の受難 夫の介護と子育てをしながら公務員になった

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夫は10月に手術を受けることができたが、手術室に入る前までは穏やかで優しかった夫が、手術を境に性格が変わってしまっていた。

高次脳機能障害に

手術から約1週間後のこと。病院の売店に夫と2人で行くと、夫は陳列棚に身体の左側をぶつけてしまう。すると棚にあった商品がバラバラと床に落ちた。

慌てて新田さんが商品を拾い始めたが、夫は顔色ひとつ変えず突っ立ったまま。

変に思った新田さんが「どうしたの?」と聞いても、「別に」と一言。新田さんが拾う様子を眺めているだけだった。

「夫は半月ほどで退院しましたが、手術前と比べるとこだわりが強く、怒りっぽくなり、物忘れが多くなりました。でも、当時高校2年だった長女も、小学5年だった次女も、まだ笑って済ませられる程度でした」

しかし2013年の1月、年末年始の休み明けから復職した夫は、手術前のように仕事ができなくなっていた。

当時、新田さんの夫は20人ほどの部下やパートのまとめ役だったが、職場へ行っても何をしていいかわからなくなっていたのだ。

失敗続きで自信をなくした夫は、次第にうつ状態になっていき、4月には精神科への通院を開始。

「夫はつねに怒っていて、私に食ってかかるようになりました。今思うと夫は、脳腫瘍の手術で『帯状回』という大脳辺縁系を手術したため、10月の時点で高次脳機能障害になっていたんだと思います。しかしこのときの私はまだ、高次脳機能障害という障害があることすら知りませんでした」

本当に夫は“うつ状態”なのか、疑問に思った新田さんは、ネットで夫の症状を調べ始める。

そして「高次脳機能障害」という後遺症があることを知り、市内にあるリハビリセンターで診てくれることがわかるとすぐ予約を入れ、6月中旬に受診した。

新田さんが今までの経過を簡単に話し、大学病院から借りたMRIの画像を見せ、認知機能を診るテストを終えると、医師は「高次脳機能障害で間違いないでしょう」と診断。

詳細な検査をすると、夫には記憶障害、注意障害、遂行機能障害、知能の低下(IQが項目によっては正常以下のボーダー域)、社会的行動障害(怒りっぽい、こだわりが強い)、左半側空間無視があることがわかり、障害者手帳の申請をしたところ、精神障害3級の手帳を交付された。

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