騒音と振動を浴びる生活
「振動がすごい。本当に、すごいんです。テレビの音も聞こえないし」
埼玉県の住宅街。宇野真知子さん(仮名、30歳)が母親と2人で住むアパートの前に立つ。メガネにポッチャリ体型の見るからに地味な女性で、2時間近い通勤時間をかけて埼玉県郡部の零細企業に勤めている。
自宅は築42年、家賃4万6000円。老朽する建物は、なんと線路沿いに建つ。ボロボロの木造の防護壁を隔て、ギリギリ洗濯物が干せる程度のスペースを空けて建物があった。ライナー、快速急行、快速、急行、準急、各停の鉄の塊がひっきりなしに自宅の真横を、猛スピードで走り抜けていく。なんの防音も防振もない。直撃する。
「下が地べたで物干しみたいな枠があるので、そこに布団と洗濯物は干すことはできる。けど、電車が通ると砕石が飛んできます。砂利みたいな。だから洋服も布団もザラザラする。朝から晩まで音がすごいし、テレビの音が聞こえないし、それだけでも頭がおかしくなりそうです。無職の母親は、1日中家にいるので健康状態は悪化の一途です」
玄関前までお邪魔したが、いちいち不快な騒音と建物全体が揺れる。病弱な母親は、奥の部屋で音が聞こえないよう布団をかぶって眠っているようで、とても長居できるような場所ではなかった。徒歩20分以上かかる駅前まで戻ることにした。
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