手取り15万円で母親を養う30歳女性の苦悩

相談できるような家族も友人もいない

解体工事を請け負う零細企業の事務をする。職業訓練校を卒業して新卒で入社した。給与は安い。基本給13万5000円、職務手当4万7000円、時間外手当と現場手当が1万3000円、総支給額は19万5000円で、手取りは15万円程度だ。入社以来、昇給はほとんどない。さらに賞与はまちまちで、よくて年間10万円程度、まったくもらえない年もある。

毎月、家賃を除くと月10万円程度が残る。自分の携帯代や昼の食費を含めたお小遣いとして3万円をもらい、残り7万円を母親に渡す。光熱費と食費だけで、ほぼなくなる。母親は騒音で音声がなかなか聞こえないながら、テレビしか娯楽がない。大河ドラマやサスペンス、月9ドラマを観賞して、あとは布団をかぶって横になって過ごしている。

「この半年間、もう首を絞められるような苦痛です」

カラオケボックスに入るなり、彼女は泣きだしてしまった。

介護の仕事はひどい世界

「なにもかもがおかしくなったのは、去年8月から。父親に我慢に我慢を重ねていた母親が離婚を決断して、父親が出ていった。父親は自己破産しているので慰謝料なんてありません。少しでも家賃を安くするために今の家に引っ越しました。不動産屋さんに4万円台は、ここだけと言われた。それから1日中、振動と騒音を浴びる生活です」

父親は現在66歳、母親は64歳。母親は腰や膝、関節が悪く、この数年病院通いをする。16年前に埼玉に引っ越してから不健康な体に鞭を打ちながら、週3日か4日、最低賃金に近い時給で飲食店やスーパーでアルバイトしていた。大黒柱の父親がいなくなった離婚後、少しでも収入を上げるためと、週4日勤務の介護施設での清掃の仕事に就いた。

「認知症専門の施設で、掃除に強い薬品をたくさん使うらしくて、たった2カ月くらいで生活ができないくらい手が荒れました。手が溶けているみたいな感じ。あまりにひどかった」

母親の手は皮膚が剥がれるような状態だった。仕事だけではなく、家事もいっさいできない。母親がやっていた家事を全部背負うことになり、手荒れのひどい一時期は満足に手を使って食べることもできなかった。介護するような状態になった。

「道具なんて持てないから、もう仕事はできません。施設からはなんの保証もないまま、自己都合で辞めさせられた。母親は元々父親からのモラハラというか、ストレスが原因で健康状態は悪かった。手荒れから本格的に免疫力が落ちて、元々悪かった腰と膝の骨がさらに悪化しました。寝込むようになって、今も毎日元気がなくなっている状態です」

離婚前までは、毎月3万円を家に入れていた。低賃金なので父親がいなくなる窮地になっても、7万円を母親に預けるのが精いっぱいだ。母親は宇野さんが稼ぐ月7万円と、父親がいるときに貯めたわずかな貯金で、家族2人の最低限の生活をした。漢方など、保険適用外の医療費がかさんですぐに貯金は尽きた。それから母親は「施設の清掃の仕事に戻る」「清掃だけじゃなくて、夜勤の仕事も見つけてダブルワークする」と口癖のように言うようになった。「そんな仕事はダメ」と、宇野さんとけんかを繰り返している。

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