「脳腫瘍で別人格」40代男性を支えた妻の受難 夫の介護と子育てをしながら公務員になった

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2017年4月。次女は高校生になったが、夫の高次脳機能障害は進み、精神障害者手帳は3級から2級になっていた。

明るい未来は別居か離婚か現状維持か

そして2020年、長女は就職して一人暮らしを始め、次女は看護学生になり看護を勉強している。

8月のある日、やはりささいな口論から、夫は突然「別居したい! 離婚だ! 子どもは俺が育てる」と言い出した。

「夫が別居や離婚を望む理由は、『娘たちに暴言を吐くなんて母親として不適格だ!』というのです。確かに私は、夫の介護と仕事に追われ、娘たちの細かなことにまで手が回らなかったかもしれません。

とくに次女が思春期を迎えた頃は、何度か母娘げんかをしたこともありました。でも、早朝に起きて弁当作りから制服や体操服の洗濯、学校生活で必要な物を買いそろえ、おこづかいも渡してと、高校生として恥ずかしくないように、やれるだけのことはやったつもりです」

このときばかりは新田さんも、長年夫を支え、介護してきた努力が夫にまったく理解されていないとわかり、涙がこらえきれなかった。

夫はそれまでも何度か別居や離婚を口にしてきたが、障害者の夫1人で家を借りて暮らすのは難しいうえ、夫はすぐに忘れてしまうため、新田さんは相手にしなかった。

ところが、夫は自分で姉2人に電話し、夫の実家近くの喫茶店で会う段取りをつけてしまう。

「夫が姉たちに『俺はこいつにいじめられているから、離婚か別居がしたい』と切り出すと、『大事な弟なんだからちゃんと面倒見なさいよ!』『かわいそうな弟!』と義姉2人にののしられました。

でも、私は夫を約9年介護してきましたが、義姉たちは数年前、義母の介護に音を上げて、1年も経たずに施設へ入所させているうえ、私が助けを求めても、真剣に話を聞いてはくれませんでした」

新田さんvs義姉2人+夫で激しい口論になったが、見かねた下の義兄が間に入り、話し合いを仕切ってくれた。

夫はグループホームなどの見守りサービスがある施設に入るのが現実的だが、「見守りなんて要らない! 一人暮らしできる!」と渋る。新田さんは、「私も娘たちも、夫の一人暮らしのための保証人になんてならない!」と話は平行線。結局下の義兄に、「このまま別居か離婚をしたほうがいいのではないか?」と言われた。

新田さんは、その後も夫の希望どおりにしたほうがいいのか、自分が介護を続けたほうがいいのか考えた。しかし答えが出ないので、久々に母親に電話してみることに。

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