日本人が「半沢直樹」をDNAレベルで好きな理由 人気ドラマを"倍楽しむ"ための歌舞伎的視点

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さらに、歌舞伎役者は「大顔」のほうがよいとされた。客席からも表情がよくわかるからだ。今の歌舞伎役者にはモデル体型の人もいるが、顔が大きく立派な人も多い。「半沢直樹」でおなじみの市川中車、市川猿之助、片岡愛之助はみんな顔の押し出しが立派だ。

ストーリーの「わかりやすさ」が重要な歌舞伎は、「正義の味方」「悪者」だけでなく、キャラが最初から細かく設定されている。「半沢直樹」はそういう部分も歌舞伎と共通している。

半沢のキャラを歌舞伎の役柄に当てはめる

歌舞伎の役柄でいえば、主人公の半沢直樹は優れた能力で事件を次々と解決する「実事(じつごと)」になるだろうか。まさにヒーローだ。時には攻め込まれてぐっと我慢をする「辛抱立役(しんぼうたちやく)」になったりする。

ライバルの東京中央銀行・取締役の大和田暁は、実力派の悪者の「実悪(じつあく)」か。最近は半沢と同盟を組んでいるが、油断はならない。腹黒さが表情からもにじみ出ている。

東京中央銀行・頭取の中野渡謙(北大路欣也)は思慮分別に富んだ大物である「捌き役(さばきやく)」になるだろうか。

国土交通大臣・白井亜希子(江口のりこ)の背後で隠然とした権勢をちらつかせている進政党大物代議士の箕部啓治(柄本明)は、超大物悪役の「国崩し(くにくずし)」かもしれない。

半沢をサポートするさわやかな青年、東京セントラル証券の森山雅弘(賀来賢人)やスパイラル社長・瀬名洋介(尾上松也)は「二枚目」だろう。

少しニュアンスが特殊だが、妙な色気を振りまきながら半沢をいじめ抜く、証券取引等監視委員会の黒崎駿一(片岡愛之助)は「色悪(いろあく)」だろうか。

悪役の中でも比較的小物で、主人公にばっさりやられるのは「赤っ面(あかっつら)」。新シリーズでは東京中央銀行・証券営業部課長の伊佐山泰二(市川猿之助)、帝国航空・財務担当役員の永田宏(山西惇)、半沢のライバル、東京中央銀行・審査部次長の曽根崎雄也(佃典彦)などがこれにあたる。

最近は「赤っ面」が半沢にどんなふうにやっつけられるかが、見どころになっている。

「半沢直樹」が歌舞伎と少し違うのは、「主人公の敵か味方かがわからない謎の人物」が結構登場することだ。東京中央銀行・常務の紀本平八(段田安則)や、弁護士・乃原正太(筒井道隆)などがそうだ。

「半沢直樹」は歌舞伎のような立て付けではあるが、そこに推理劇のような要素が入れ子細工になっている。だから、テレビドラマ通にも見ごたえがあるのだと思う。

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