日本人が「半沢直樹」をDNAレベルで好きな理由 人気ドラマを"倍楽しむ"ための歌舞伎的視点
このところ筆者の妻は、日曜夜9時になると自分の部屋にこもって「誰も入ってこないで」とのたまう。いわずと知れた“あのドラマ”を見るため、である。
テレビ離れが進行しているといわれる中、25%超という高視聴率をたたき出し、社会現象まで巻き起こしている「半沢直樹」。巷間、このテレビドラマは「歌舞伎に似ている」とされる。
筆者も同感だ。しかしそれは、歌舞伎役者が多数出演しているから、だけではない。
人気漫才師が真似た「半沢直樹」
筆者が「半沢直樹」と歌舞伎の類似性を初めて感じたのは、7年前の前回シリーズからだ。
前シリーズは最終回で、香川照之(九代目市川中車)扮する東京中央銀行の大和田暁が、堺雅人の演じる半沢直樹に詰問され、凄まじい形相で土下座したことが大きな話題になった。その年の暮れ、漫才師のナイツが寄席の舞台でこれを見事に再現したのだ。
東京中央銀行を漫才協会に置き換えて、ツッコミの土屋伸之が凄まじいセリフの嵐で協会の不正経理などを追及し、協会理事であるボケの塙宣之を追い詰めて、ついには土下座させるのだ。その迫真の演技に、客席はパロディとわかっていながら大きくどよめいた。この漫才、芸能史に残ると思う。
今ではあまり知られていないが、落語や漫才などの寄席芸は「歌舞伎の教養の下地があるお客」を前提として発展してきた。
出囃子はもっぱら歌舞伎の専用音楽である「長唄」から取られている。また、落語の演目には「芝居噺」というジャンルがある。噺家が高座で歌舞伎のセリフを言い、演技の真似をして客席を沸かせたのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら