ただ、安倍政権下では、成長率が目標に達しなかったというだけで、実際の景気は決して悪かったわけではなかった。若年人口の減少を背景とした人手不足がキーワードとなり、企業が非正規雇用から正規雇用への転換を含めて採用活動を積極化したのは、新型コロナ禍以前の記憶として鮮明だ。完全失業率の推移では、アベノミクスの成果想定を上回り、歴史的な低水準となっている。
景気はそれなりに良く、ほぼ完全雇用の状態が続いた。であれば、賃金上昇が進み、それにともなって物価上昇率も高まっていくというのが経済のセオリーだ。だが一部の非正規雇用を除いて賃金の伸びは限定的で、物価上昇率もさほど高まらなかった。
このことは、アベノミクスの戦略としては失敗と捉えられる。なぜなら、アベノミクスでは、大胆な金融政策によってデフレは払拭できると考えられており、日銀の黒田東彦総裁は異次元緩和の開始時に「物価上昇率2%の目標を、2年程度を念頭にできるだけ早期に実現する」と豪語していた。それによって、実質金利(名目長期金利-物価上昇率)が低下し、企業の設備投資が拡大して一段と経済が拡大するというのが、アベノミクスの理屈だった。
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