失敗か成功か、8年弱のアベノミクスで得た教訓 ポスト安倍政権が踏まえるべき5つのグラフ

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政権奪還を実現する直前、アベノミクスを柱とした衆院選公約を発表する安倍晋三首相(2012年11月12日)(撮影:尾形文繁)

安倍晋三首相が健康問題を理由に辞意を表明したことで、8年弱に及んだアベノミクスはひとまずピリオドを打つ。現在本格化している後継者選びの結果次第では、アベノミクス的政策が継続される可能性は小さくないが、まずはこの8年弱をデータで振り返り、何が成功し、何が誤算だったのかを振り返ってみよう。

経済成長と財政健全化の両立が課題だった

アベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、投資を喚起する成長戦略という「3本の矢」で構成された。日本銀行による国債の大規模購入など異次元の金融緩和政策、防災・減災・国土強靱化の公共事業支出がその中心を担った。

もうひとつの基本的メッセージは、「経済成長なくして財政再建なし」だ。公的債務残高約1100兆円(GDP<国内総生産>比約2倍)と先進国で突出した最悪水準にある財政について、経済成長にともなう税収増を重視して、増税などの負担増は極力避ける姿勢をとった。

安倍首相在任中に2度の消費増税が実施されたが、これは第2次安倍政権より前の野田佳彦・旧民主党政権が自民・公明との3党合意で決めたものだ。安倍首相自身は終始、増税には消極的なスタンスであり、「経済成長を実現すれば、税収増を通じて財政健全化の課題は解決する」という論法で一貫していた。

このようなアベノミクスについて、当初描いた将来想定と実際の帰結では、どんな相違があっただろうか。それを具体的に検証するには、第2次安倍政権が発足当初に、アベノミクスの成果を前提として策定した「中長期の経済財政に関する試算」(2013年8月8日公表)を見てみるといい。ここでの将来推計値と実績値を比較してみよう。

まずは、経済成長だ。

アベノミクスは当初、異次元の金融緩和政策が、金融マーケットにサプライズを与え、円安・株高を演出した。それを追い風に高額品を中心とした個人消費が拡大し、2013年度の実質GDP(国内総生産)成長率は前期比2.8%増のロケットスタートを見せた。だが、早くも翌2014年度には、消費増税による成長率の落ち込みが想定以上に大きくなり、その後も低迷した。特に2018年度からは年率2%の目標から大きく乖離している。

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