感染者4人で再封鎖「ニュージーランド」の凄み ハードな短期戦で再びコロナ撲滅を目指す

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再びコロナ撲滅を目指すニュージーランドのアーダーン首相は、ケタ違いのスピードで対策を講じている(写真:Martin Hunter/ロイター)

8月9日、ニュージーランドの人々は新型コロナウイルスの市中感染がゼロになってから100日目を迎えたことを祝い、パブで飲んだり、スタジアムに詰めかけたり、友だちとハグし合ったりしていた。

その2日後、状況は一変した。4人の新規感染がオークランドで確認されたのだ。4人は家族だった。当局は13日、集団感染は17人に拡大したと発表した。パンデミック対策で高く評価されるこの島国にどうやってウイルスが戻ってきたのか、当局は感染経路の特定に全力を挙げている。

1つには、輸入貨物に紛れ込んでいた可能性が考えられる。感染者の中には輸入食品を扱う冷蔵倉庫で働いている人たちがいた。もう1つ注目されているのが、海外帰国者向けの隔離施設だ。オーストラリアのメルボルンでは、こうした隔離施設が集団感染の発生源となった。

ケタ違いのスピード対応

経路不明の感染者がわずかに確認されただけで、ニュージーランドは「普通の生活」に別れを告げた。ジャシンダ・アーダーン首相はただちに人口170万人の都市オークランドを再びロックダウン(封鎖)。2度目のコロナ鎮圧を目指して大規模な検査、接触者追跡、隔離作戦の実施を発表した。

「徹底して早期に手を打つ。これが今でも最善の選択肢だ」。コロナ関連で毎日行っていた記者会見を復活させたアーダーン氏は8月13日、このように述べた。「私たちには策がある」。

同様の困難に直面した地域は少なくない。香港、オーストラリア、ベトナムはいずれも早期にコロナを封じ込めたが、その後、新たな感染の波に襲われた。ニュージーランドは突然の感染復活に落胆させられたものの、ケタ違いのスピードで大規模な対策に乗り出した。そうすることが感染爆発を撲滅し、早期に生活を正常化させる必勝パターンとなることを期待しているのだ。

「ハグ、握手、レストラン、映画など、私たちは休暇で海外に出かけることを除けば、以前の生活をすっかり取り戻していた」。こう話すのはオークランド大学の細菌学者スージー・ワイルズ氏だ。「そうしている間に私たちは、検査と接触者追跡の能力を大幅に拡充するのに時間を費やすことができた。したがって今回は、いかにすばやく感染を終息させられるかを現実にテストすることになる」。

「所要時間は、あらゆる面で大幅に短縮されている」とワイルズ氏は話す。

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