日本の外国人「締め出し」あまりに厳しい実態 在留外国人10万人が入国できない状態に
ある非営利の野生動物保護団体で働くジェフ・マジオッタが、自宅のある日本から南アフリカに向かったのは3月初め。現地のパークレンジャー向けの救急医療講習を開き、1カ月後には東京に戻ってくる予定だった。
だがそれから5カ月近くが経った8月初めになっても、マジオッタは東京に帰れずにいた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本政府は4月、水際対策として外国人に対する厳しい入国規制を導入した。そのせいでマジオッタをはじめとする10万人近い人々が、日本での在留資格を持つにもかかわらず再入国できない事態となっている。
日本から見捨てられたように感じている
この入国規制で問題とされているのは、一般の日本国民に認められている旅行の権利が、永住者や定住者などの外国人に認められていないという点だ。そのためにマジオッタら多くの人々がまさに進退窮まった状況に置かれているのだ。
マジオッタは手持ちの現金がほとんどなかったうえに日本の銀行口座から預金を下ろすこともできず、友人からの金銭的な支援に頼って糊口をしのいでいる。保護団体での仕事のほかに、マジオッタは英会話スクールの教師としても働いていたが、今は無給休暇という扱いになっていて、東京のアパートの家賃も払えない状態だ。
「4カ月分の賃金が手に入らず、支払いは積み上がるばかりで、どう生活を立て直していけばいいのか」とマジオッタは7月下旬、ビデオチャットでの取材に応じて語った。日本在住の外国人の中には、日本から見捨てられたように感じ、「日本での生活を築き上げるのにあれだけの時間とエネルギーを投じたのは正しかったのだろうかと自問している」人々もいると彼は言う。
日本はおもてなしの精神で知られる一方で、在留外国人に対する警戒心の高さでも有名だ。政府は資本と人材を世界から集めようと――最近では香港から逃げ出そうとしている金融機関の誘致も視野に入れつつ――投資先としても働く場としても日本はアジア随一だと売り込んでいる。だがそんなアピールも、コロナ禍における在留外国人の扱いのひどさの前には色あせて見える。また、国際社会の日本に対する信頼を揺るがす事態にもなっている。
問題の入国規制をめぐっては、日本に進出している外国企業や在留外国人から強い非難の声が上がっている。大手外国企業の幹部からは、日本との関係を見直しているとの声も聞かれる。ただでさえ先の見えないこの時期に、日本政府のこうした外国人に対する扱いは企業活動の足かせになりかねない。