日本の外国人「締め出し」あまりに厳しい実態 在留外国人10万人が入国できない状態に

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これに対し日本政府は、マジオッタのように日本に帰ってこられずにいる在留外国人の再入国を徐々に認めるよう、規制の一部緩和を行う方針を明らかにしている。だがすべての人が対象になるわけではなく、政府の資料によれば最大で1万7000人はその後も再入国ができない見込みだという。

入国規制のせいで多くの人が痛手を被っている。家族は引き裂かれ、キャリアに傷が付き、若者は何カ月もの間、学校に行けないままだ。出国先の外国での滞在費がかかるうえに日本でも税金や家賃を払い続けなければならず、多額の借金を背負った人もいる。

「外国籍の住民に対する事実上の差別」

日本国内にいる250万人の外国人にも悪影響は及んでいる。少なからぬ人々が、死に瀕した親の看病のために、家族の死を悼むために、夫や子供と再会するために出国を願いつつも、日本に戻ってくることができなくなる可能性があることからつらい決断を強いられているのだ。

「できるだけ安全で先が読める場所で事業を始めたいと思うなら、日本はぴったりだ」と、在日米国商工会議所のクリストファー・ラフルアー会頭は言う。

だが「旅行に関するこの政策は外国籍の住民に対する事実上の差別だ」とラフルアーは言う。「間違いなく数カ月先の人々の判断に影響を及ぼすだろう」。

もちろん、新型コロナウイルスの感染防止の観点から国境の往来を制限しているのは日本に限らない。出張や観光などの短期の渡航を制限もしくは禁止した国も多い。日本は146カ国からの入国を禁止しているが、その中にはコロナを根絶したはずのニュージーランドや台湾といった国・地域も含まれる。

ニュージーランドも台湾も、長期の在留外国人に対しては到着時に一定期間、自主隔離を求めるだけで自由な出入国を認めている。対照的に日本は、主要先進7カ国(G7)の中で唯一、自国民には自由な行き来を認めておきながら外国人の渡航を制限している。

当局者に言わせれば、これは日本よりも大規模な流行が起きている国々からのウイルス持ち込みを防ぐとともに、空港での検査件数がキャパシティを超えることを防止するために必要な措置だ。

コロナ禍が始まって半年を過ぎた今も、日本の1日あたりのPCR検査の実施可能件数は約3万3000件にすぎず、先進諸国の中では断トツの少なさだ。このうち国際空港に振り向けられているのが約3000件で、9月には1万件に増やす予定だ。

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