日本の外国人「締め出し」あまりに厳しい実態 在留外国人10万人が入国できない状態に

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日本に住む外国人は、例え永住者であっても4月3日以降、基本的に再入国ができなくなった。再入国が認められるのは「特段の事情」がある場合のみ。例えば病気の親族の見舞いや親の葬儀への出席といった「人道上配慮すべき事情がある」と認められた場合などが該当する。

だがガイドラインの規定はあいまいで、条件に当てはまりそうな人であっても入国が認められるという保証はない。在留外国人は日本を出国する際、再入国が認められない場合もあることを了承するという書類に署名しなければならない。最終的に入国の可否を決断するのは空港の入国係官だ。

入国拒否の対象国は17カ国増えた

観光・ホテル業界のコンサルタントとして活動しているジュリー・サージェントは父の死後、家族と過ごすために3回にわたって出国を試みた。

サージェントによれば、6月の時点で当局から、再入国を認める対象にはならないと言われたという。父の葬儀から時間が経過しており、今さら家族と悲しみを分かち合う必要がなぜあるのかというのが、当局の言い分だった。

「日本を宣伝することが私の仕事だ。この国がうまくいくことを願っている」とサージェントは言う。「(だが)この状況があまりにも長く続くようなら、日本を去ってもっと権利を認めてくれるほかの国に移る決断をするかも知れない」。

こうした在留外国人の懸念を受けて安倍晋三首相は7月、一部の入国規制を緩和する方針を明らかにした。また外務省も、4月の規制強化以前に出国した人の再入国を認めるようにするとの方針転換を発表した。

だがその一方で、入国拒否の対象国は17カ国増やされ、コロナウイルスに感染していないことを示す検査証明を出発前72時間以内に取得することが義務づけられた。検査資材が不足していたり、すぐに結果が出ないような国に滞在している人々にとっては無理な注文だ。

マジオッタにとって、今回の経験は拭い去ることのできない印象を残した。彼は日本政府の方針転換を受けて入国許可を在南ア日本大使館に申請した。日本での就労ビザが切れる9月までに再入国が認められるかどうかわからないという不安な状況で、彼は希望を失いかけていた。

「日本に戻れたところで」と彼は言った。「(失ったもの、背負わされたものの)山はもはや登れないくらいに高くなっているのではないだろうか」。

(執筆:Ben Dooley記者、翻訳:村井裕美)
(c) 2020 New York Times News Service

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