空港検疫「コロナ陽性じわり増」の先に待つ懸念 成田空港では時給2500円でPCR検査官を募集
6月下旬の午後、成田空港第2ターミナルに設けられた検疫所のエリアには、緊迫した空気が流れていた。アメリカ・ダラスからの到着便に、機内で体調を崩した乗客がいたのだ。新型コロナウイルスに感染している可能性がある。「患者さん1名、付き添い1名がこれから向かいます」――。検疫所内にアナウンスが流れると、簡易的な医療ガウンを着た検疫官の医師がバタバタと機内に走っていった。
しばらくすると、検疫所職員に付き添われ、車椅子の患者がやって来た。日本人と見られ、ぐったりとしている。新型コロナ対策用に特別に拡張した検疫所のエリアで健康状態や入国後の滞在先などを書類に記入した後は、ついたてで仕切られたブースでPCR検査を実施。それが終わると、車椅子で検疫所をあとにした。コロナの疑いのある患者は「陰圧室」と呼ばれる感染を防止する部屋に隔離され、検査結果を待つことになる。結局、一般の乗客が飛行機を降り、検疫所へとやって来たのは着陸から1時間半近く経ってからのことだった。
『週刊東洋経済』は7月18日号で「コロナ徹底検証」を特集。世界で感染爆発が続く中、日本が感染の第1波を乗り切った「日本モデル」の内実を検証。7月に入り、東京都の感染者数が過去最多となるなど感染再拡大が続く中、第2波に備えてすべきことは何かを追った。
成田空港からの入国で陽性者が増加傾向
足元で海外との往来を再開する動きがある中、難しい舵取りを迫られるのが、政府の水際対策だ。日本では現在、入国規制、空港でのPCR検査、陰性者の自己隔離の3つを実施している。その中のPCR検査の結果について、成田空港検疫所の担当者は「最近、また(陽性者が)増えている」と語る。
なぜか。厚生労働省の検疫所業務管理室は「日本の感染拡大を受けて一度母国に帰った外国人の在住者が、感染の収まりを受けて再来日しているのではないか」と推測する。7月10日の時点で、日本は世界の国の7割弱にあたる129カ国を入国拒否の対象にしている。結果、2019年の12月に406万人いた入国者は、5月に1万人まで減った。ただ、入国拒否地域からであっても、日本人と、外国人でも「特段の事情」が認められた永住者や日本人の配偶者などであれば、入国が可能だ。
こうした入国者の陽性者数が急増したのは、政府が欧州の主要国やアメリカ、中国全土などを入国拒否地域に指定した3月末から4月上旬のこと。「仕事などでアメリカなどに滞在していた日本人が『戻れるうちに』と大量に帰国してきた」(成田空港検疫所)。3月25日~4月25日までの陽性者数は1日平均で4.3人に上り、「検疫所の対応が追いつかず、機内に長時間待たせてしまったお客様が心身共に疲弊し、不満の声が寄せられることもあった」(同)。
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