元特殊部隊員が語る日本の「自衛隊員」意外な強み 小説「邦人奪還」に見えるそれぞれのお国柄

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伊藤:はい。敬語になると上下を意識して、言うべきことを言えなくなります。少しでも危険を察知したら共有すべきで、危機管理としてのタメ語です。

成毛:そうか、タメ語は大企業よりもベンチャー企業が強い理由でもありますね。特殊部隊ともなると、訓練はすさまじいことと思います。例えばどんなことをするのか、言える範囲でお願いします。

伊藤:肉体の限界を認識しておくことは大切で、だから確認作業が事前に必要になります。

成毛:肉体の極限……誰が何をできるか、というより「どこまで耐えられるか」?

伊藤:そうです。どこまでやれるかを試しておくことが必要で、それを試すときは緊張します。仮にですよ。仮に、空中から海上に人間を降下させる際に、この装備ならどれくらいの高さまで大丈夫か、知りたくなるわけです。パイロット、仕切っている私、実際に降下する隊員、が連携しつつ、その上限を探らなければならないですよね。

肉体的に可能な域値設定も創設時以来、積み重ねてきた大切な財産の1つです。それらは、日本人の体格や日本近海ので自然環境が密接に関わってきますので、海外からの情報は参考にはできますがまねは、できませんので……。

組織捜査小説としての「自衛隊」ジャンル

成毛:今、エンターテインメント分野では警察小説がよく読まれているように思います。その流れに乗ってしまったのか、警察小説を100冊以上、ここ1年間で一気読みしたんです。明日からでも捜査一課か公安総務課で勤務できそうです(笑)。

『邦人奪還 自衛隊特殊部隊が動くとき』(新潮社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

伊藤:100冊を一気読み? また極端な。成毛さんは本読みの特殊部隊というか……。

成毛:一気に量を読むと、見えてくる景色があるのでしょう。

ともかく警察組織を舞台にした小説が読まれる理由はわかる気がするんです。読む人は自分の会社員生活や、組織の中の立ち位置を重ねて読みつつも、警察小説からなんらかの非日常的な刺激も得たいわけです。初老の職人刑事と女性のキャリア刑事の組み合わせなんて、民間企業でも起こりうる。しかし民間企業には死体はない(笑)。だから地上波のドラマも警察ものが増えてきて、むしろ組織に属さない探偵ものは少なくなったような気がします。

刑事警察と自衛隊って、何かが起こってから、大組織の中の個人として対処するという構造において、似ているかもしれません。とすると、警察小説の次は自衛隊小説が読まれるんじゃないかと思うんです。自衛隊というジャンルで読みたいテーマはまだまだたくさんあるので、次の作品もぜひ、期待しています。

伊藤:ありがとうございます。

成毛 眞 元日本マイクロソフト社長、HONZ代表

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なるけ まこと / Makoto Naruke

1955年北海道生まれ。元日本マイクロソフト代表取締役社長。1986年マイクロソフト株式会社入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。現在は、書評サイトHONZ代表も務める。『amazon 世界最先端の戦略がわかる』(ダイヤモンド社)、『アフターコロナの生存戦略 不安定な情勢でも自由に遊び存分に稼ぐための新コンセプト』(KADOKAWA)、『バズる書き方 書く力が、人もお金も引き寄せる』(SB新書)など著書多数。

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伊藤 祐靖 元自衛隊特殊部隊員

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いとう すけやす / Sukeyasu Ito

1964年東京都生まれ。日本体育大学から海上自衛隊に入隊。防衛大学校指導教官、護衛艦「たちかぜ」砲術長を経て、「みょうこう」航海長在任中の1999年に能登半島沖不審船事案に遭遇した。これをきっかけに全自衛隊初の特殊部隊である海上自衛隊「特別警備隊」の創設に携わる。2007年、2等海佐の42歳のときに退官。後にフィリピンのミンダナオ島で自らの技術を磨き直し、現在は各国の警察、軍隊への指導で世界を巡る。国内では、警備会社等のアドバイザーを務めるかたわら私塾を開き、現役自衛官らに自らの知識、技術、経験を伝えている。

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