元特殊部隊員が語る日本の「自衛隊員」意外な強み 小説「邦人奪還」に見えるそれぞれのお国柄

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成毛:伊藤さんの本は、ノンフィクションもフィクションも、私には組織論、そしてリーダー論の本としても読めるんです。

伊藤:自衛隊というのは、組織としては「軍隊」ですから、組織の系統やリーダーのあり方がおのずと問われるところがあります。そもそも、入隊したての同級生には、自転車に乗れないとか、じゃんけんがわからないとか、左右がわからないなんてヤツも当たり前にいました。そういうヤツらに左右をいかに識別させるかにおいては、自衛隊は異常なほどの経験が蓄積されている場所です。

成毛:なるほど。そういう新入生教育の場として、自衛隊は最適なんですね。

伊藤:はい。頭の教育よりも何よりも、まずは普段の当たり前の動作を仕込んでいきますね。それぞれができないと何も組織としてできません。

成毛:新入社員教育として、自衛隊へ1週間の体験入隊という会社もありますね。

伊藤:基本的に無料でできるので、いいかもしれません。学生のうちは自分のためにすることが多いですが、社会に出ると組織のために、しかも集団で何かをするということが多くなるわけですから、それを、行動を通じて認識させるにはいいかもしれません。

日本人は「ボトム」が高い

成毛:ところで、日本人のお国柄はありますか?

伊藤:日本はボトムが高いんです。

成毛:ボトムが高い? 平均的な能力が高いということですか?

伊藤:ん……。まあ、そうですね。ボトムのレベルが他国に比べてとても高いと思います。優秀な人が多いというよりも、ダメな人が少ない感じでしょうか。それが日本の強さだと思います。それぞれの持ち場を守らせれば、歯車がうまく全体として機能する、ということです。

成毛:サバを食べられないアメリカ兵はどうですか?

伊藤:世界一の軍事費を払える経済力とは、圧倒的な物量を伴う軍事力を意味します。そのうえで、個人レベルでは「誰でもやれる」という前提で戦略を立てるのが上手な国で、この2点で私は最強の軍隊だと思っています。ただ、1人ひとりの能力は、というとそうでもないです。

成毛:どんな軍事的な戦略が適しているかを考えることって、結局は組織論ですよね。だからこそ、驚くほどに『邦人奪還』は企業小説的な側面もあるのだと思いました。例えば、特殊部隊の小隊の内部ではタメ語を使わせている。敬語を禁止しているわけですね。

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