“米国製理系エリート”のキャリアパスとは 「グローバル人材」たちの苦労と葛藤(1)

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メジャーリーグのチームドクターを目指して

もちろん、野球でメジャーリーグに入ろうというのではない。スポーツ医学を勉強し、メジャーリーグのチームドクターになろうと考えたそうだ。ならばアメリカで学ぶほかはない。彼はオレゴン州立大学に合格し、高校卒業後にアメリカに渡った。飛行機に乗るのは2度目で、海外に出るのは旅行を含めてもそれが人生で初めてだったそうだ。「俺ごんどオレゴン行ってくるわ」と友人に言い残して日本を去った、とか。

オレゴン州立大学で、彼は医学大学院に進学するための「Pre-Med」と呼ばれるプログラムに加え、スポーツ科学の基礎を学ぶ「Exercise and Sport Science」というプログラムにも在籍した。

大学院に入って最初の数年は、昼間はラボで実験をして、夜は道場で柔道をする生活

だが、ひょんなことで有機化学の研究室に入る機会を得、そこで研究の面白さを知り、また成果を出したため、大学院は医学ではなく化学の博士課程に進むことにした。ハーバードを選んだのは「興味のある研究室が複数あったことと、自転車圏内に柔道場があったこと」が理由だったそうだ。

彼がハーバードで所属したのは、その分野で非常に高名な先生の研究室だった。そこで彼が取り組んだのが、マイクロ流体力学という、医療装置や診断装置の小型化につながる研究だった。研究環境には恵まれていた反面、苦労も多かったそうだ。

もちろんアメリカの研究室は多かれ少なかれ、どこも事情は同じなのだが、彼の研究室はとりわけ厳しかったようで、結果を出せずに志半ばで研究室を去らざるをえなかった同僚も何人かいたという。しかも大所帯だったから、先生から直接指導を受ける機会も限られていた。

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