アラブの春にソーシャルメディアは効いた? 経済学徒がゲーム理論の手法で分析してみたところの話
――全入時代ともいわれる今、大学はますます注目を浴び、メディアに取り上げられることもしばしばだ。大学のあり方、最近の大学生の傾向、海外留学記と、提供される情報は枚挙にいとまがない。しかし、大学において学生たちが今、実際に取り組んでいる研究と言われたときに、具体的なイメージを浮かべることはできるだろうか? 彼らは日々、いったい何をしているのだろうか?
今一度問う! アラブの春とソーシャルメディア
アラブ諸国は近年、次々と政変を迎えた。事の発端はチュニジア革命(ジャスミン革命)だ。2010年12月18日に始まった反政府運動によって、翌年1月14日に約23年にわたるベン・アリー政権が崩壊した。続いてエジプトでも2011年1月25日から反政府運動が起こり、同年2月11日、約30年にわたるムバラク政権に終止符が打たれた。リビアとイエメンでも反政府運動の結果、政権交代に至った。現在も多くの国で反政府活動が行われている。アラブの春とは、2010年末からアラブ世界で起こった、これらの反政府活動や騒乱を総称するものである。
アラブの春にはFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアが影響したと言われている。というのも、ソーシャルメディアでデモが計画されたり参加の呼びかけがなされたりしていたためである。なんとなく説得力のある話だが、ちょっと安易な気もする。確かに革命の直前には多くの人がソーシャルメディアで革命について話し合っていたが、単なるおしゃべりにすぎなかった可能性もあり、十分な根拠にはならない。実際、反対意見も多い。たとえば、ジャーナリストのマルコム・グラッドウェルはソーシャルメディアの影響には懐疑的だ。論争の真っ最中なのだ。
後述するように、ソーシャルメディアの影響は安易には肯定できない。だが、否定もしにくいため、厳密な分析が望まれる。というわけで、ゲーム理論と呼ばれる数学的な手法を用いてきっちり分析してみたい。
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