アラブの春にソーシャルメディアは効いた? 経済学徒がゲーム理論の手法で分析してみたところの話

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

重罰化は革命を助長する!?

ここで一旦、問題を逆の立場、政府の立場から見てみれば、どうやって革命を阻止するか、ということになる。直観的には反政府的な書き込みを重罰に処せばよいように思われる。重罰化すれば反政府的な書き込みに伴う危険が高まり、市民はデモへの賛同などの書き込みを控えるはずだ。

ここまでは政府の思惑どおりだが、話には続きがある。

重罰化されているにもかかわらず、なお反政府的な書き込みをした市民は、結局、革命に行かなくても重罰に処せられる可能性が高い。ということは、ヤケクソで暴動に行く可能性が高まる。この市民がヤケクソを起こしやすいことは、書き込みを見たほかの市民も知っているから、彼らも(反政府的な書き込みや)暴動に加わるインセンティブが高まる。反政府的な書き込みに対する重罰化は、それを減らす効果はあるが、いったん書き込まれれば暴動を誘発しやすい。この意味で重罰化は革命を助長しうる。

しかし、こうした影響を知ってか知らずか、アラブ諸国ではインターネット上での反政府的な書き込みを重罰に処していなかった。そもそもそうした書き込みは検閲でなかなか見つからなかった。だから、反政府的な書き込みに対する罰が軽く、検閲にもなかなか見つからないような状況において、ソーシャルメディアの影響を分析しなければならない。

次ページ革命はどんなときに成功するのか?
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事