年収を上げたい人に「MBA取得」推奨できない訳 MBA取得者が断言「実務には役立たない学位」

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もう一つは、人脈形成です。社会人大学院や中小企業診断士の研究会には、能力・意欲の高いさまざまなバックグラウンドの社会人が集まります。同じ人脈形成でも、SNSや異業種交流会とは、参加している人の質とつながりの深さがまったく違います。

では、こうしたプラス・マイナスを勘案した場合、社会人はMBAや中小企業診断士を取得すべきでしょうか。

MBAを取ったほうがいい人とは?

近年は、経営戦略の大家ヘンリー・ミンツバーグ『MBAが会社を滅ぼす』や早稲田ビジネススクール・元教授遠藤功『結論を言おう、日本人にMBAはいらない』などMBA批判が盛んです(中小企業診断士も「役に立たない」とよく言われますが、MBAほど批判はありません)。

しかし、私は「リーダーとして活躍したいなら、取得したほうがいい」と考えます。先ほどのメリットの中で、人脈形成の効果が大きいからです。

どんなに優秀な人でも、自分一人でできることには限りがあります。リーダーとして大きな仕事を成し遂げるには、誰がどういう知識・スキルを持っているかという情報(transactive memory、交換記憶と言います)を蓄え、適切な人材を有機的に組み合わせて活用する必要があります。MBAや中小企業診断士での質の高い人脈は、ダイナミックに仕事をするための大きな武器になるのです。

もちろん、下山さんのようにMBA・中小企業診断士を取るだけでは、何の変化も起きません。取った後も、人脈を維持・発展させるための継続的な取り組みが欠かせません。

とかくイメージで良い・悪いと語られることが多いMBA・中小企業診断士。紹介した事例を参考に、リーダーを目指す方にはぜひ挑戦してほしいものです。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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