年収を上げたい人に「MBA取得」推奨できない訳 MBA取得者が断言「実務には役立たない学位」

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ここまでコンサルタントというやや特殊な職業の事例を紹介しましたが、一般の社会人にとって、MBA・中小企業診断士は意味があるのでしょうか。

私は会社勤務時代にMBAと中小企業診断士を取得し、独立開業後は、産業能率大学大学院でMBAの、中小企業大学校で中小企業診断士の育成に携わってきました。その経験から次のように考えます。

「MBA・中小企業診断士に学習面の効果はほとんどなく、収支的には大赤字。ただ、学ぶことは楽しいし、人脈形成には有効」であると。

「実務には役立たない資格」である

まず、MBA・中小企業診断士の学習をしても、マネジメント能力はほとんど高まりません。よくMBAでは最先端の経営技法や経営の秘伝を習得できると信じている方がいますが、古いケースを使ってワイワイ議論しているだけです。

中小企業診断士の学習も、マネジメントの基本をなぞる程度。いずれもビジネス書を読めば学べる内容で、実践の役には立ちません。

以前はMBAの希少価値が高かったので、「MBAを取って転職し、年収が大幅アップ」ということがよくありました。しかし日本国内にMBAが増えて大衆化し、こうした成功例はめっきり減りました(海外のランキング上位校なら話は別)。中小企業診断士が転職に役立つことは、ほぼありません。

一方、MBAを取るには大学院に通うため数百万円の費用かかります。中小企業診断士を取るには受験予備校に数十万円を払いますし、資格維持にも年数万円かかります。したがって、MBAも中小企業診断士も、収支的にはあまり旨味がありません。

ただ、金銭面以外の価値があります。一つは、学ぶことの楽しさです。内容的にはビジネス書を読めばわかることでも、いろいろなバックグラウンドを持つ仲間とディスカッションするのは、知的な刺激があります。仲間と切磋琢磨して成長するというのは、それ自体がかけがえのない体験です。

次ページMBAと中小企業診断士の「真の価値」とは
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