日本人の「1億総中流」意識が崩れた決定的要因 2020年を迎えた日本社会の動かしがたい現実
強まる階層変数と階層帰属意識
格差拡大が進行する過程で、人々の「中流意識」には変化が生じていた。
1975年の段階では、どの学歴でも、どの社会階層でも、また所得額にかかわらず、自分を「中」と考える人の比率が高かった。たしかにこの比率は、大卒者やホワイトカラーで高く、また所得が高いほど高くなるといった傾向はあるのだが、その違いは大きいとはいえなかった。そして自分を「中」と考える人の比率そのものは、1985年以降のSSM調査(編注「社会階層と社会移動全国調査」のこと)でもほとんど変化がなく、75%前後で安定している。
ところが社会学者の吉川徹は、この間に人々の意識に重要な変化が生じていることを発見した。1975年の段階ではきわめて弱かった、学歴、職業、所得などの階層変数と階層帰属意識の関係が、1995年までの間にだんだん強まっていたのである。(吉川徹「『中』意識の静かな変容」、『現代日本の「社会の心」』)
こうした変化は、その後も続いている。この結果、近年では、人々が学歴や職業、所得などにかかわらず、同じような階層帰属意識をもつとはいえなくなってしまった。ただし「中の上」と「中の下」を合計した「中」全体の比率は、やはり学歴や職業、所得などに関わりなく多い。だから「中」全体の比率にしてしまうと、違いがはっきりしなくなる。そこで階層帰属意識を、次のように分類し直してみることにしよう。
SSM調査の階層帰属意識に関する設問の選択肢は、「上」「中の上」「中の下」「下の上」「下の下」の5つである。真ん中は、「中の上」と「中の下」の間にある。ということは、「上」または「中の上」を選んだ人は、自分を「人並みより上」と考えているということである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら