日本の格差拡大が昭和末期に始まっていた証拠 国民は容認したが現実には階級社会が進行した

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現実の社会では人々は公平な条件の下におかれているのではなく、個人の努力が報われるとは限らない(写真:tumsasedgars/iStock)
新型コロナ禍は日本における格差をさらに拡大させ、中流層が下流に転落するリスクがかつてないほどに高まっている。日本は“階級社会”化に歯止めがかからず、中流層は消滅していくのだろうか。「日本人は『1億総中流』崩壊の深刻さを知らない」(2020年8月5日配信)に続いて、社会学者である橋本健二氏の著書『中流崩壊』より一部を抜粋し、お届けする。

1980年代に入り、格差拡大が始まった

1985年の『国民生活白書』は、戦後40年間の国民生活の変化を跡づけた大部なものだったが、ここには1961年から1983年までの所得と金融資産のジニ係数が示されている。白書が強調したのは、あくまでも、高度経済成長の過程で所得格差と資産格差がともに急速に縮小したということだった。しかしいずれについても、近年はわずかながら格差が拡大していることが控えめに記されている。

政府の公式文書が、高度経済成長期以降の日本について格差拡大の事実を認めたのは、1988年の『国民生活白書』が最初だといっていいだろう。もっとも、その認め方は率直とはいいかねる。

1988年といえば、バブル景気が本格化した時期である。下記の図表で示した「所得再分配調査」による当初所得によるジニ係数は、1980年に0.349と底に達したあと、1983年には0.398と急上昇し、1986年には0.405にも達していた。

(外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

しかし白書は、なぜかこの数字を示さない。「家計調査」から算出されたジニ係数を示して、この値が高度成長期に急速に低下したあと、以後は不況期に上昇、好況期に低下するという傾向を示しており、1985年と86年は不況だったので上昇したと、格差拡大が一時的な現象であるかのように描こうとする。年齢別、企業規模別、産業別、職業別、男女別、雇用形態別などの賃金格差についても検討されているが、はっきりとは結論しない。

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