日本人の「1億総中流」意識が崩れた決定的要因 2020年を迎えた日本社会の動かしがたい現実
また自分を「下」と考える人の比率(「下の上」「下の下」の合計)は、貧困層でも31.2%と多くはなく、相対的貧困層(25.3%)、相対的富裕層(19.7%)と大差がなかった(富裕層は8.7%)。貧しい人々も自分たちの貧しさを、よくわかっていなかったということができる。
階層帰属意識が「階層化」した
ところがその後、自分を「人並みより上」と考える人の比率は、豊かな人々では急速に上昇し、貧しい人々では低下していく。この変化は40年間にわたって続いており、2015年になると自分を「人並みより上」と考える人の比率は、富裕層で73.7%に達したのに対し、貧困層ではわずか10.0%まで低下した。
そして自分を「下」と考える人の比率は、貧困層では45.8%に達し、相対的貧困層(29.5%)、相対的富裕層(16.3%)と大差がつくようになった。ちなみに富裕層はこの比率がわずか1.1%で、豊かであるにもかかわらず自分を貧しいと誤認する人は、ほぼ皆無になった。
豊かな人々は自分たちの豊かさを、また貧しい人々は自分たちの貧しさを、それぞれ明確に認識するようになった。こうして階層帰属意識は、現実の階層序列に沿ってきれいに分かれるようになった。階層帰属意識が階層化した、といってもいいだろう。所得の違いにかかわらず大多数の人々に共有される「中流意識」というものは、今日までにほぼ解体してしまったのである。
このように「総中流」などというものは、社会移動の構造や所得分配など、実体的な面からみても、また人々の意識の面からみても、すでに崩壊している。これが2020年代を迎えた日本社会の現実である。
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