年収3000万円のマイケルの場合、日本では所得税40%と住民税10%の50%がかかり、この時点で手元に残るのは1500万円。しかし税率17%の香港であれば2490万円と、約1000万円もの差がついてしまうのである(各種扶養控除は除いて計算)。
この結果に、マイケルは驚きを隠さなかった。「香港の家賃はたしかに高い。でもいくら自分でも、年間1000万円以上も支払っているわけじゃない……。しかも手取りが1000万円減って、さらに家賃や子供の学費もかかるわけでしょう」(マイケル)。
子供の学費も支払う必要がある
「駐在員として東京に赴任するのであれば、家賃もインターナショナルスクールの学費も支給されるケースが多い。しかし、東京採用であれば日本人同様に、自分で支払うことになります。金融人材を誘致したいならば、東京を金融特区にでもしないと難しいのでは、と思いますが、そこまで必要かという議論も生まれてきそうです」(香港で金融人材を多く紹介するJACリクルートメント香港の渥美賢吾・代表取締役社長)。
渥美氏の元にもここ数カ月で「東京のポジションに興味がある」という香港人が何人か訪れたというが、いずれも転職には至らなかったという。
東京を拠点に、金融人材の紹介に強みを持つタイグロンパートナーズの野尻剛二郎代表取締役社長も「東京は(所得税が日本と同程度の)欧米人には人気があります。ただしそれでも、住民税の高さを気にする人もいる。香港の金融人材からは、あまり問い合わせはきていませんね」と話す。
東京採用であれば、当然ながら日本語力も求められる。「トレーダーなら日常会話レベルで足りるかもしれませんが、フロント(営業職)ならば当然ネイティブレベル。ミドルオフィス、バックオフィスもビジネスレベルはないと厳しい」(野尻氏)。香港人が日本国内で、香港と同程度の職を得るのは容易なことではないのだ。
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