ナイキとラコステの自己革新パワーの秘密 ニッポンブランドは「凛とした精神性」を発信せよ

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初めて「国家のブランドイメージ」を強く意識させられたのが1970年の大阪万博。テレビのニュースや雑誌で見る、アメリカ館やソ連館をはじめとする巨大なパビリオンのデザインや、展示物、コンパニオンのユニフォームなど、すべてが目新しく、まだ行ったことのない外国をイメージさせるのに十分な効果をもちました。

また、その頃に登場したのが、「アディダス」のスポーツ・ウェア。陸上部の友人がクラスの仲間に誇らしげに見せた白いTシャツには、大きく「adidas」のロゴがありました。初めて目にして「その、アビバスって、なあに?」と聞いていた級友の顔を今でも思い出します。中学から高校へ進む頃に流行ったのは「VAN」の洋服と「リーガル」の靴。高価でとても手が出ませんでしたが、おしゃれな連中の間ではマストアイテムとなっていました。

昭和を駆け抜けた数多くのブランドの中で、私が忘れられないのが、小学校2-3年生頃に母親の友人からいただいた三菱鉛筆「ユニ」です。トンボ鉛筆やコーリン鉛筆はじめ、1本10円の時代に、三菱鉛筆が技術の粋を集めて1本50円の価格で敢然と世に問うた、子供が使うにはもったいない超高級鉛筆でした。1ダース入りのケースは透明プラスティック製で、中には消しゴムまで入っていました。このケースを筆箱として学校に持っていくのが一種のステータスでもありました。

製品に「uni」とアルファベットで表記された名前には、世界最高の滑らかさを持つただ一つの鉛筆という意味が込められています。ユニは、最初から高い志をもって開発されており、名ブランドに成長する素質にあふれていました。凛とした精神性を感じる、昭和の名工の作品とでもいうべきユニが、平成の今なお、鉛筆のプレミアムブランドとして生き続けていることに敬意を表したいと思います。

「クールジャパン」で本当にいいのか?

中国でちょっと日本に興味のある若者が認知しているコトバが「カワイイ」です。もともと「可愛(クーアイ)」は中国語で「愛すべき」という意味ですが、日本のドラマや原宿ファッションに関心のある人たちは、日本語風に「カ・ワ・イ・イ」と発音することを知っています。また、「宅(ジャイ)」の字が日本では「オタク」を意味することも、オタク文化の広まりと共に知られてきています。こうした現象をとらえて、日本国内では相も変わらず「日本のアニメやコスプレが海外でも大人気」といった文脈で、日本文化を「クールジャパン」の常套句でくくった報道が見られます。

海外にも日本のポップカルチャー愛好家がいるのは事実であり、喜ばしいことでもあります。しかし、グローバル社会へ向けた日本文化の発信が、「クール」や「カワイイ」などのキャッチフレーズのもと、ストリートファッション、アニメ、コスプレ、J-POPなどに偏っていること、しかもこれらの現象の浸透で「海外でも日本文化が受け入れられている」と満足する風潮があるのには、違和感を禁じえません。

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