「1人っ子政策」からの歴史的転換
中国の人口政策の代名詞である「1人っ子政策」が転換期を迎えています。1979年の制度導入以来、中国は総人口の抑制には成功し、ここのところ14億人弱で推移しています。ところが、急速な経済発展に伴って、中国は早くも少子高齢化社会に突入し、2010年には労働人口が減少に転じました。現在、65歳以上人口は約1億人ですが、これが2025年に2億人に達すると予測されています。情報源によって数値にばらつきがありますが、2030年には3億人に達するという報道もあります。
人口を維持するには、TFR(合計特殊出生率)が2.1以上必要ですが、現在の中国のTFRは1.5とも1.6とも言われています。実際は、「黒孩子(ヘイハイズ)」と呼ばれる、戸籍を持たない子供たちが存在するので、もう少し高いのかもしれませんが、いずれにせよ、このままでは人口が減り続けることになります。また、男児と女児の比率がいびつなことも指摘されています。男児対女児の比率はおおよそ120対100と言われ、パートナーに巡り合えない男性が多く出てしまう理屈です。
若年層比率の低下は、公的年金(中国語では「養老保険」)制度への懸念も膨らませています。中国では年金制度自体は整えられており、サラリーマンの場合、会社が月収の20%相当額を負担、個人が8%を納める形で財源が確保されています。しかし、年金受給者の急増に本当に対応できるかどうか、危ぶむ声が大きくなっています。
このような人口動態を背景として、昨年12月、政府は1人っ子政策を緩和する方針を決めました。それを受けて、今年2月21日、北京市政府は「両親のうちどちらかが1人っ子の場合は、子供を2人持つことを認める」という政策を打ち出しました。ちょっとややこしいのですが、実は北京では少子化対策として2003年に「両親とも1人っ子の場合は子供2人までOK」というルールを作っていました。都市化と経済発展が進む北京市では、TFRは1.0にとどまり、60歳以上が人口の20%に達しています。
天津市、浙江省、江西省、安徽省がすでに「2人っ子政策」の導入を決め、広西壮族自治区、湖北省、江蘇省が3月に、上海市、湖南省、青海省も今年前半に導入に踏み切ると報じられています。
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