出生率1.18でも中国があと10年成長するワケ ポイントは、「生産年齢人口」と「富裕層」と「都市化」

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ビジネスにおいて、日本と中国の関係は深い。しかし、日本で伝えられる中国ビジネスの姿は、実態とズレがある。元財務官僚で、マッキンゼーで最年少パートナーとなった金田修氏。現在、中国で起業家として活躍する彼が、ネット業界、流通業界を軸にして、日本には伝わってこない中国ビジネスのリアルをつづる。
一人っ子政策の見直しも検討する中国。出生率の低下によって、中国の急成長は終わってしまうのか(写真:ロイター/アフロ)

中国の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの人数)が実は1.18。この「1.18ショック」が話題となっています。

中国国家人口計画生育委員会はこれまで中国の合計特殊出生率を「1.8」と主張していましたが、国家統計局が2012年夏に公表した数字は「1.18」でした。

この数字を受けて「中国の大躍進は終焉した」「中国はこれから沈んでいく」といった論調の報道が数多くされています。しかし、私が中国で見ている印象はかなり違います。私は「中国の大躍進はまだまだ10年は続く」と見ています。今回はその根拠についてお話ししましょう。

出生率だけを議論しても仕方がない

1.18という数字が本質的に深刻な問題をはらんでいるのは確かです。北京や上海ではさらに低く、0.7程度。東京は約1.0ですから、それよりも低い。とはいえ、中国ではまだ年間1600万人の子どもが生まれていて、子どもの競争は非常に激しく、大学に行くのも一苦労です。また出生率の問題は、都市の住居コストや教育コストの上昇からいって、一人っ子政策を解除すれば解決するものではありません。

そして、これは韓国や台湾、香港が共通に抱えている問題でもあります。親の教育熱がすさまじく、自分の子どもには自分以上にいい暮らしをさせたいという思いが強いのです。

さらに就業機会が集中する都市では地価も高くて広い家を買うのも大変。そうした状況で、日本も含めて人口を維持し、社会を崩壊させないためにどうしたらいいのか。この答えをまだ東アジアのどこの国も見つけていません。ですから、中国の出生率の問題だけを今、議論しても仕方がないと思うのです。

われわれ一個人、一企業レベルでは、将来的な人口問題を気にして現時点での中国事業を思いとどまったり、中国を避けてしまうのは短略的だと思います。それよりも「1.18ショック」の周辺の数字を見ることで、人口問題の全体像をとらえていきたいと思います。

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