そう言ったのは、シンガポールの国父、リー・クワンユーだった。仕事を求めて海外へ出ることは、日本においても現実的な選択肢となりつつある。われわれ日本人が世界中の人材たちと対等に戦っていかなければならない時代は、もはや始まっているのだ。
本連載では、すでに海外でポストをつかみ第一線で活躍する若き日本人の中でも、いわゆる「駐在員」ではなく、「現地雇用」を得た人たちに注目したい。彼らの素顔、「海外出稼ぎ」の中で直面した困難や仕事の面白み、そして経済的な事情や日々の生活スタイルなどなどに触れることを通して、世界がこれからのわれわれに何を求めるのか、いわば「世界の募集要項」が何であるのかに迫っていく。
国際機関で働くということ
元JICA理事長、緒方貞子さんは、包帯で頭がぐるぐる巻きになった彼女に向かって言った。
「危険な目に遭わせてごめんなさい。コンゴは大変な場所です。でも、そこでJICAは支援をしなければなりません。だからこそ、あなたに行ってほしいのです」
今回話を聞かせていただいた長木志帆さんは、JICA職員としてコンゴに赴任した後、世界銀行の職員となって、アフリカの政情不安定な国々を駆け巡っている。まさに現場の最前線で体を張って仕事をする女性だ。
学生時代、ルワンダ大虐殺に衝撃を受けて始まった国際協力への道。どこへ行っても日本人は自分ひとり、というような環境下で、情熱を絶やさず業務に挑む彼女は、小さな体からは想像できないほどの強いパワーを持っている。
「仕事の9割以上は大変なこと、でも、残り1割の報われる瞬間に計り知れない価値があるから踏ん張っていられる」
そう話す瞳は、使命感に燃えて、輝きを失わない。
熾烈な競争が巻き起こる世界銀行での勤務とは、どんなものなのか。今回は、彼女の歩んできた壮絶なこれまでを振り返りながら、国際機関で働く条件、現場の仕事環境、またそこで味わえる醍醐味などについて、聞かせてもらおうと思う。
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