沖縄「べにいもたると」を取り巻く強烈な危機感

コロナで観光需要蒸発、土産菓子企業の針路

「エーデルワイス沖縄」の製菓工場。沖縄素材を使ったケーキや焼き菓子など4ブランドの商品を製造している=7月8日、西原町(筆者撮影)

定番の県産素材を生かすための工夫も重ねている。紅芋のタルト菓子の圧倒的な認知度から、同社は進出後1年ほど、原料にあえて紅芋を使わなかったという。

だが、エーデルワイス沖縄の山本憲司社長は「マーケットを知るにつれ、リピーターのお客さまほど紅芋を使った新しい商品を求めていることがわかった」と話す。フィナンシェやパウンドケーキなどを開発し、今では観光土産の売り上げの約5割を紅芋素材のお菓子が占めるようになった。

エーデルワイスにとって土産菓子の現地製造の挑戦は、「沖縄の地で、沖縄の人の手による『Made by Okinawa』の本物を提供する」(山本社長)という、付加価値の高い新規事業に新たな境地を拓いた。

今年4月からは新しい「食品表示法」が完全施行され、商品のパッケージに製造所の所在を明記することが義務づけられた。沖縄で作られた商品かどうかが一目でわかるようになり、アピールの方法次第では、県内メーカーの競争力を高められる可能性がある。

「復帰っ子」世代の新しい経営

一方、「スイートデビル」のナンポーの直営店舗事業の展開は道半ばだが、今回の緊急事態に伴う休業対応では、賃料交渉、人員配置の調整、賞味期限管理など直営ならではの課題や弱点をつかんだ。年内には、観光客や商業施設向けのいずれでもない、別の顧客層をターゲットにした新事業案をリリースする計画で準備を進めているという。

安里社長は「コロナ前までの直営の経験がなかったら、打つ手が見いだせなかったかもしれない。いよいよ本領発揮のときが来た」と前を向く。持ち前の好奇心と改革マインドで、危機に立ち向かおうとする覚悟がうかがえた。

「沖縄のための仕事をしなさいと、今回の危機に背中を押してもらった」と語るナンポーの安里睦子社長=7月2日、那覇市のナンポー本社(筆者撮影)

ナンポーは、戦後の荒廃した沖縄で経営していた印刷業の会社が前身。経営状態の苦しい地元の土産品の卸会社や製塩会社、ケーキ店などを助けるために事業譲渡を受けて立て直し、雇用を増やして会社を大きくしてきた経緯がある。

2代目に就いた安里社長は、沖縄の本土復帰の1972年に生まれた「復帰っ子」と呼ばれる世代。アメリカの大学に3年間留学した後、グループ会社の「ちとせ印刷」に22歳で入社、営業部門で17年間にわたって経験を積んだ。

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