苦境の出版界でも大手書店が意外に好調な理由 紀伊國屋書店トップが語る出版界の再生策

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――コロナ禍で海外店舗の出店計画に変更はないのですか。

海外事業は1月までは業績が好調で、過去最高となる10億円超の利益を見込んでいたが、店舗の休業で若干の利益が残る程度になった。こうした状況下でも5月にアラブ首長国連邦に広さ750坪のアブダビ店をオープンしたところ、欧米の出版社から「このコロナ禍でよく新しい書店を作ってくれた」と賞賛の言葉を頂いた。

たかい・まさし/1947年生まれ、東京都出身。成蹊大学法学部政治学科卒業。1971年、紀伊國屋書店に入社。各地の営業所長、副社長などを経て、2008年社長に就任。2015年より会長を兼務。写真は2016年(撮影:梅谷秀司)

こういう声を聞くと、将来を見据えてやっていることが間違いではなかったと実感する。コロナ禍はいずれ終息するものと考え、海外展開は再び進めていく。

出店ペースは遅れるかもしれないが、オーストラリアやマレーシア、フィリピンなどからも出店要請がある。アメリカでも引き合いが続いている。日本製の文具は海外で受けがよく、文具を扱う子会社とあわせて展開していく。

――アマゾンにどう対抗していきますか。

送料無料やポイント付与といった施策を推し進めるアマゾンに、正面から対抗するのは無理だ。

紀伊國屋書店ではリアルタイムで各店の店頭在庫を確認することができる。(紀伊國屋書店の)ウェブストアから注文した商品は、お客様が指定した店舗で受け取ることもできる。そのようなサービスをもっと強化し、より地域密着型を目指していく。

国による金融支援も必要

――業界全体をみると、書店の閉店が止まりません。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

極論にはなるが、書店への銀行の融資が厳しい現状に鑑みれば、国による金融支援も必要ではないかと思う。出版という産業が潰えてしまう危機が近づいているのだから。また出版業界の側も、市中在庫を適正規模にしないといけない。

書店の閉店が続く一方で、出版取次会社の傘下に入る事例がたくさん出ている。(取次会社がそのように動く)背景にあるのは、取引先の書店が潰れてしまったら、(書店に卸した書籍の未回収の代金である)売掛金が回収できなくなってしまうことへの不安だろう。

しかし、それで本当に経営が再建した書店がどれだけあるか。取次会社の経営悪化の一因には、傘下の書店の経営の難しさもあるのではないか。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では「返品率や書籍の配送インフラに対する考え方」「電子書籍の取り組み」「今後の出版業界について」などについても語っている。
成相 裕幸 会社四季報センター 記者

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なりあい ひろゆき / Hiroyuki Nariai

1984年福島県いわき市生まれ。明治大学文学部卒業。地方紙営業、出版業界紙「新文化」記者、『週刊エコノミスト』編集部など経て2019年8月より現職。

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