新型コロナウイルスが拡大する中でも営業自粛要請の対象外となった書店。一時的な休業や営業時間短縮はあったものの、小学校の休校によって、家庭内で使う学習参考書やドリル、児童書の特需が生まれた。集英社コミック『鬼滅の刃』などの大ヒットもあり、コロナ禍が直撃した3~5月でも前年同期の売上高を上回った郊外店は少なくない。
国内68店、海外39店を展開する紀伊國屋書店は、東京と大阪の旗艦店を臨時休業。一方、店舗以外の研究機関向けの営業部門は底堅く、ウェブ経由で急増した需要も取り込んだ。
出版業界はコロナ禍以前から書店の閉店が相次ぎ、出版流通を担う取次会社の経営も苦しくなっている。出版流通インフラの再構築が急務とされる今、出版産業に未来はあるのか。紀伊國屋書店の高井昌史会長兼社長に聞いた。
ウェブ販売に注文が殺到した
――新型コロナウイルス拡大でどれくらいの影響がありましたか。
旗艦店の新宿本店と梅田本店を(外出自粛期間中の4月から5月にかけて)臨時休業したため、それぞれ20%ほど売上高が落ちた。確かに痛いが、紀伊國屋書店は大まかに言えば売上高の半分が店舗で販売する小売の店売部門、もう半分は大学や企業向けに販売する営業部門だ。
大学がオンライン授業に移行したのに伴い、学生の教科書需要が予想以上に伸びた。新しい形式の授業に学生が不安を感じて、学習の基本である教科書を読み込むことに意識が向いたのだと思う。
また、自社サイト「紀伊國屋書店ウェブストア」の4月の売上は前年の4倍以上で、対応がパンク状態となった。アマゾンでは出版物よりも生活必需品の配送が優先され、その分当社に殺到したのだろう。
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