慶応で採用されている華陀体操のひとつに、「爪の裏」というメニューがある。正座の体勢になり、地面と接している足の爪に力を入れる。当然痛みを感じる一方、爪に力を入れることで、足首が柔らかくなるという。
「普段地面に接している足の裏は、自然と鍛えられている。でも、逆側の爪のほうにも筋肉がある。そこに力を入れられると、足の裏にも力が生まれる。そういう力の入れ方を覚えると、地面を蹴りやすくなる。面白いことを考える人がいるでしょ?」
留学で米国野球の真髄を学ぶ
上田は慶応高校に赴任して7年目の1998年、アメリカのUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に1年間、野球留学した経験がある。野球監督として実績のない上田は、名門に受け入れてもらうべく、手紙にこんなメッセージをしたためた。「華陀体操という、東洋の神秘を教えてやる」。さらに、「『僕は日本一の監督です』とか適当なことを書いたら、何と受け入れてもらった」という。
30年以上のキャリアを誇る名将ゲーリー・アダムスの下、かつてメジャーリーガーとして活躍した打撃、投手コーチとともに米国野球の真髄を学んだ。その根底にあったのは、「日本以上に日本的な野球」だった。上田は「アメリカでは個性を伸ばすと思っていたが、基礎練習の徹底がすごかった」と振り返る。
ロサンゼルスで知られるリトルリーグチームの練習を見に行くと、衝撃的なシーンを目にした。小学生がボテボテのゴロゴロを捕球し、1塁にランニングスローする練習を繰り返していたのだ。上田が「どうやってやるの?」と聞くと、少年は答えた。
「右足を前に出して、1、2、3のタイミングで投げるんだよ。それをドリル式で練習している。日本人はそんなことも知らないの?」
アメリカでは少年からプロレベルまで、ドリル式で基礎をたたき込んでいく。一見、派手なプレーも、習得するには反復練習するしかない。普段から繰り返しているからこそ、いざ試合で能力を発揮できる。
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