南米のベネズエラから60kmほど北上すると、カリブ海に浮かぶ小島がある。人口15万人、国土面積は種子島と同じくらいのオランダ領キュラソーだ。この島は現在、優秀な野球選手輩出地として注目を集めている。
日本では昨季、年間本塁打記録を達成したウラディミール・バレンティン(東京ヤクルトスワローズ)、メジャーリーグで本塁打王と打点王を1度、ゴールドグラブ賞を10度獲得した後に東北楽天ゴールデンイーグルスに加入したアンドリュー・ジョーンズがキュラソー出身だ。メジャーでは昨年ショートとしてゴールドグラブ賞を獲得したアンドレルトン・シモンズ(アトランタ・ブレーブス)、ロサンゼルス・ドジャースのクローザーとして君臨するケンリー・ジャンセンらが活躍している。
世界で活躍する人材育成法
なぜ、多くの人が名前も知らないようなカリブの小島から、バレンティンやジョーンズのように優秀な選手が続々と現れてくるのか。筆者と写真家の龍フェルケルは今春、その理由を探るべく当地を訪れた。多くの野球関係者やジャーナリストに話を聞くと、浮かび上がってきたのが「世界で活躍する人材育成法」だ。
まず前提として、キュラソーにプロリーグはない。プロ野球選手を目指す少年は、総じてアメリカでメジャーリーガーになることを夢見て努力する。
メジャーにたどり着くまでのルートは、日本とは決定的に異なる。日本人の場合、プロ野球で活躍してメジャー移籍を目指すのが一般的だが、キュラソーでは少年リーグで実力を蓄え、メジャーとの契約が認められる16歳になった頃にスカウトされるケースが多い。彼らはドミニカ共和国やベネズエラのアカデミーに渡り、マイナーリーグでベースボールの基礎、アメリカで生活していくための英語や文化教育を施される。
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