定年後アルコール依存症に陥りやすい人の特徴 「暇だから」「何となく」という飲酒が危険

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「60歳以降でアルコール依存症になると、多くの方で『転倒』『失禁』『物忘れ』が起こります。ご本人は酔っぱらっていて覚えていないことが多く、ご家族が苦労しているということが多いですね。また、認知症になるのが早まります。一般的に認知症は70代以降で起こることが多いですが、アルコール依存症者では60代から認知機能の低下が起こってきます」。ある研究では、60歳以上のアルコール依存症者の43.5%に物忘れ以上の認知機能障害がみられたという。

その要因はさまざまであり、まずアルコールに依存する生活になると、十分な食事をとらなくなっていくことから、ビタミン欠乏によるウェルニッケ・コルサコフ症候群になり、その症状として認知機能の低下が起こることが多いと指摘している。また、同研究は、飲酒量が多いと脳梗塞などの脳血管障害のリスクが高くなる、肝障害も脳へ影響する、転倒による硬膜下血腫や脳挫傷が多くなるとも書いている。

家族や介護者を困らせる「暴言」

「暴言」で周囲を困惑させることもある。「年をとって酔いやすくなっていることに加え、おそらく認知機能の低下と関連して自制がきかなくなる面がみられます。これは介護職の方からもよく聞く話です」と和気氏は話す。

関西の介護従事者(ケアマネ、ヘルパー、看護師等)を対象に実施されたアンケート調査では、79.1%もの人が「利用者のアルコール問題を経験した」と回答している。

「酒浸りで生活が荒れている。暴言をはく。そういったことは依存症の病状なのですが、それをわからないまま介護するというのは精神的な負担が大きいと思います」。和気氏は近年、介護従事者を対象とした講演会や講習に呼ばれて話をする機会が増えてきたそうだ。

アルコール依存症は「否認の病」といわれ、本人は自分が依存症であると認めないことがほとんどだ。先の下村さん、小野さんがそうであったように、家族が心配して医療につなぐことが多い。飲酒量が多いことを心配する家族、あるいは介護従事者はどうすればよいのだろうか。

「まず話をするタイミングが重要です。一度、しらふのときに話してみてください。ご家族にうかがうと、『飲まないと約束していたのに酔っぱらっている』というタイミングで話しているケースがよくみられます。それが続くと、家族は口を開くと責めるようになり、本人はまた責められると感じます。しらふのときに、責めるのではなく『心配している』というメッセージを伝えてください」

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