定年後アルコール依存症に陥りやすい人の特徴

「暇だから」「何となく」という飲酒が危険

また和気氏は、アルコール依存症患者全体の高齢化を指摘する。「アルコール依存症の治療を始めて約20年になりますが、患者層は高齢にシフトしています。以前は40~50代が中心でしたが、今は50~60代が中心。特に65歳以上の患者さんは、以前は少数派でしたが、今は約3割を占めています」。

和気氏は富田林保健所の嘱託医を務めているが、アルコール関連の相談は70代からが圧倒的に多く、問題となるほどの飲酒が始まった年代を調べてみると81.5%が60歳以降だったという。

高齢者は若い世代よりも少量で酔っぱらう。「健康日本 21 推進のためのアルコール保健指導マニュアル」によると、加齢の影響により体内の水分量が低下するため、若い人と同じ量の飲酒をしても高齢者のほうが、血中アルコール濃度が上昇する。高齢者は何らかの薬を服用していることが多く、薬とアルコールとの相互作用により酩酊しやすくなることもあるという。

酒で「ストレス発散」癖ある人は注意

若い頃と同じつもりで飲んでいると、自然とアルコール依存症への道を突き進んでいってしまうのだが、60代の当人に「高齢者」という意識はまだないというのが実際のところではないだろうか。下村さんも、「退職した頃はまだまだ現役という意識があった」と語っている。

また、日本アルコール関連問題学会などがまとめた「簡易アルコール白書」によると、高齢者がアルコール依存症になる要因として、「退職」「配偶者や友人との死別」、それに伴う「社会的孤立」「健康問題」などが挙げられている。若い頃から飲酒によりストレスを発散させる傾向のある人は、こうした高齢者特有の喪失感やストレスをお酒でまぎらわそうとして依存症に陥ることが多いとされる。ただ、和気氏は自身の診療経験からこう感じているという。

「年齢層によってアルコール依存症になる背景には一定の傾向がみられます。例えば、若い人は虐待の既往や不安障害などの精神疾患を背景に、心の傷を癒すためにお酒を飲むことが多いです。中高年であれば、仕事上のストレスや不眠などを紛らわすために飲酒をすることが多い。一方で高齢者の場合には、特にこれといった背景があるわけではなく、ただ定年後にぽっかりと空いた時間があって、それを手っ取り早い手段としてお酒で埋めていることが多いようです」。小野さんの言う「ひとことで言うと、暇だから」である。

特に理由もなく、何となく日中から飲み始めるようになると、問題は間もなく起こり始める。

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