定年後アルコール依存症に陥りやすい人の特徴 「暇だから」「何となく」という飲酒が危険

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定年後、わずか数年でアルコール依存症に陥ってしまう人が増えている。そうなる人の傾向とは?(写真:筆者撮影)

新型コロナウイルスの影響で、自宅で過ごす時間が長くなるなか、何となく昼からビールやチューハイに手が伸びるという人も多いのではないだろうか。実は新型コロナ騒動の前から、同じように持て余した時間をお酒で埋め、その結果としてアルコール依存症に陥る人たちがいた。定年退職後の60~70代男性である。

近年、何の問題もなく定年まで勤め上げた人が、定年退職からほんの数年でアルコール依存症に陥ってしまうケースが増えている。今はコンビニなどで手軽にアルコールが入手でき、値段も安い。ストロング系といわれる、手っ取り早く酔えるアルコール飲料も増えている。

もともと飲酒と親しんできた世代が、自由な時間を埋めるため、生きがいの喪失や孤独感を埋めるために、それほど懐も痛まないお酒に頼るというのは想像に難くない。当事者とアルコール依存症の専門医の話を元に傾向を探った。

定年退職から3年足らずで幻覚が出現

「大きな物音で目が覚めると、子どもを連れた若い女性が庭を歩いていたんです。おかしいなと思って見ていると、今度は落ち武者が現れて……」。下村和志さん(69歳・仮名)が幻覚を見たのは、勤めていた家電量販店を定年退職し、2年10カ月後のことだった。周囲は口を揃えて「お酒のせい」「あんたはアル中や」と言ったが、本人にその自覚はなかった。

40歳を過ぎた頃から酒量が増え、ロング缶(500mL)のビールを毎日6本飲む生活を長く続けてきた。50代で離婚を経験し、食生活が荒れた。朝食を食べなくなったうえに、夜はおつまみとビールだけ。ロング缶6本は多いと思い、3本しか買わないようにして、それで済ませられる日もあれば、コンビニに買いに出ることもあった。休肝日というのは記憶にないくらい毎日飲んでいた。

65歳で定年を迎えるとすぐに日の高いうちから飲むようになった。「なんせ手持ちぶさた。それで朝のビールを覚えた」。それでも下村さんの場合、1日の飲酒量が増えることはなく、6缶を1日かけて飲んでいたという。

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