定年後アルコール依存症に陥りやすい人の特徴 「暇だから」「何となく」という飲酒が危険

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依存症の状態になり、飲酒が続くと、酒が酒を呼ぶ状態になるという。重症になれば、離脱症状を回避するために飲まざるを得ない。「お酒が切れると苦しいから飲む」ということになってしまう。

「ですからご家族には、『そういう飲み方は、もう本人が好き好んで飲んでいるのではなく、依存症が進んでしまって仕方なくそうなっているのかもしれないですね』というお話をします。考えてみたら不憫ですよね、と。家族がひどいと思っている行いが『病状』であるということを知ってもらえれば、かける言葉が変わり、関係性が変わってくることがあります」。

2014年6月に「アルコール健康障害対策基本法」が施行され、各都道府県には精神保健福祉センターや保健所などに、当事者や家族が気軽に相談できる相談拠点を確保することが盛り込まれた。精神保健福祉センターは敷居が高いかもしれないが、保健所ならアクセスしやすいという人も多いのではないだろうか。相談はもちろん無料だ。

医療機関にかかる場合も、本人が飲酒をやめる気がなくても相談に行くことは可能だという。「診察はご本人の思いを聞くことから始まります。そのときは飲み続けるしかできない人も、すべての支援を拒否するかといったらそうではありません。支援を途切れさせないことが大切です」(和気氏)。

治療においても、高齢者では依存症を認めるかどうかは重視していないそうだ。「若い人の場合は、依存症であることを認めて自分自身と向き合うプロセスが重要になります。一方で高齢者の場合は、自分が依存症であることを認めるかどうかは棚上げして、お酒を飲んでいないほうが、ご飯がおいしく食べられる、体調がよくて快適であるということに焦点を当てたほうが、治療がうまくいくことが多いです」。

高齢者の飲酒、適量は?

厚生労働省が示す「節度ある適度な飲酒」は1日平均純アルコールで20g程度、具体的には「ビール中ビン1本」「日本酒1合」「チュウハイ(7%)350mL缶1本」「ウィスキーダブル1杯」だ。高齢者はどれくらいの量が適当なのだろうか。

「飲酒しないのが一番です。飲むとしても厚生労働省が提示する量の半分。休肝日は多いほうがいいですし、量は少ないほうがいい。一番いいのは繰り返しになりますが『飲まないこと』です。高齢者に限らず、飲酒による健康へのメリットはないと思ってもらったほうがいいです。少量なら健康にいいという説も最近は否定されるようになってきています」。

厚生労働省の発表によると、2018年の日本人の平均寿命は男性が81.25歳、女性が87.32歳と男女ともに過去最高を更新している。定年は区切りであるが、多くの場合、その後約20年にわたり人生は続いていく。いかに過ごすかを考えたとき、「暇だから」「何となく」の飲酒は避けておいたほうがよさそうだ。

1)アルコール保健指導マニュアル研究会:健康日本 21 推進のためのアルコール保健指導マニュアル.社会保険研究所、東京、2003
2)松下幸生、他:厚生労働省精神・神経疾患研究委託費「薬物依存症・アルコール依存症・中毒性精神病治療の開発・有効性評価・標準化に関する研究」総括研究報告書(主任研究者 和田 清)、2007年
3)松下幸生、他:アルコール依存症に併存する認知症.精神神経学雑誌112:774-779、2010
4)関西アルコール関連問題学会:介護現場でのアルコール関連問題Q&A.筒井書房、東京、2009
前田 みやこ フリーライター

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まえだみやこ / Miyako Maeda

1980年神戸生まれ。医学書出版社の編集職を経て、2011年よりフリーライター。医療系の取材を得意とする。気になるテーマは、依存症、ひきこもり、緩和ケア、在宅医療、看取りなど。現在は兵庫県西宮市在住。

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