ヨシダナギが1000万円を投じた「意外な被写体」

アフリカ少数民族の撮影で有名になったが…

「6年前に、DVDで『プリシラ』という映画を観たんです。3人のドラァグクイーンがバスで旅をする映画で、私、ロードムービーにはまったく興味がないんですけど、そのときは絶賛する口コミを見て興味が湧いて、『ほんとに面白いのかな』とひねくれた視点で観始めました。でもすぐに、クイーンたちの美しさに見ほれてしまって、『わぁ、カッコいいなぁ』と思ったんです。そのことを一昨年、急に思い出したんです」

マネジメントを担当しているキミノ氏に「ドラァグクイーンを撮りたい」と話したところ、「いいんじゃない」と前向きな反応を得た。そこで次に、脚光を浴びる前から目をかけてくれていた信頼するキュレーターにも伝えると、「いいと思う、ナギさんっぽいじゃない」と好感触だった。2人から背中を押されたことで、新作の制作を決心した。

インスタグラムでモデル探し

撮影は、ニューヨークとパリですることに決めた。毎年のように通っていたアフリカにはツテがあるが、両都市には何もない。そこでまずは、撮影するモデルになってくれる人をインスタグラムで探した。

「#dragqueennyc」とタグを打ち込むと、たくさんのクイーンが出てくる。その中から撮ってみたいと思った人を60人ほど選び、間に入ってくれることになったニューヨーク在住の日本人キュレーターにアポを取ってもらった。そのキュレーターは、相談に乗ってくれたキュレーターが現地でのサポート役として紹介してくれた人で、アポ取りのほか取材場所の確保にも協力してもらった。

モデル探しは難航した。返信がない人、途中で連絡が取れなくなる人、ギャランティーが合わない人、スケジュールが合わない人が続出。それでもなんとか数人と約束を交わし、昨年2月、ニューヨークに飛んだ。

ここ数年はテレビの密着取材が入ることが多かったが、今回はなし。しかし、「私がしたいのは、きれいな写真を撮ることではなく、彼らの美しさを伝えること。個人個人がそれぞれにドラマがあって、こういう立ち姿になったんだという美しさの源泉をひもときたい」という思いから、撮影するクイーンたちのインタビュー動画も収録することに決めた。そのため、マネジメントのキミノ氏のほか動画撮影チームも同行した。

ちなみに、ドラァグクイーンの撮影に関する費用、撮影チームの渡航費から宿泊費、クイーンへの謝礼などほぼすべて、ヨシダナギが自費でまかなった。どういう結果が出るのかわからない新作の撮影に、資金を提供してくれるスポンサーはいない。簡単に見積もっただけで数百万円の費用がかかることがわかったが、それだけお金をかけても撮りたいと思えたのが、ドラァグクイーンだった。

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