ヨシダナギが1000万円を投じた「意外な被写体」 アフリカ少数民族の撮影で有名になったが…

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それもあって、自らの意志でドラァグクイーンを対象として選んだものの、「ヨシダナギが少数民族以外を撮るってどうなの?」「ドラァグクイーンを撮るならほかの人でもいいんじゃない?」と批判されるんじゃないかという不安にさいなまれ、撮影を始めてからも「ちゃんと私っぽさを出せてるのかな……」と確たる自信を持てずにいた。

しかし、ミニュイの優しい言葉と毅然とした姿が、ヨシダナギを解放した。

こうじゃなきゃいけないって思わなくてもいいんだ。私は私でいいんだ。私は、私が撮りたいものを撮るんだ。誰になにを言われても、これが私の作品だと胸を張ろう。

「撮影自体は好きじゃない」人気写真家の悩み

ヨシダナギという名を、テレビを通して知っているという人も多いだろう。20代前半から単身でアフリカに乗り込み、子どもの頃から憧れていた少数民族の撮影をしていた彼女を一躍有名にしたのは、テレビ番組『クレイジージャーニー』だった。

2015年、この番組に出演すると、独学で写真を学んだ彼女ならではの独特の色彩や、現地の少数民族と生活を共にして良好な関係を築くユニークなスタイルが注目を集めた。それから瞬く間に雑誌の表紙を飾り、ラジオのパーソナリティも務める人気写真家に駆け上がった。昨年、全国の百貨店で開催された回顧展「HEROES」には、計10万人が来場したという。

その華やかな活躍の陰で、ヨシダナギはこの3年ほど悩んでいたという。周囲から「少数民族以外の作品も観たい」と言われるようになったからだ。著名人を撮影してほしいというオファーも頻繁に届くようになった。

しかし、そもそも彼女は「撮影自体は好きじゃない」と公言しており、「大好きな少数民族に会えるし、彼らのかっこよさを伝えたい」という思いで活動してきた。商業的な依頼を受けても、興味の持てない対象のオファーは断ってきた。

とはいえ、それまで撮りためた少数民族のベスト作品集『HEROES』を出した後に、違う少数民族の作品を発表したら、「またか」と思われるかもしれない。飽きられてしまったら、少数民族のかっこよさを伝えるという目的も果たせなくなるという懸念も抱いていた。

私はこれから何を撮ればいいんだろう。そう思い悩んでいたときにふと閃いたのが、ドラァグクイーンだった。

次ページきっかけは映画『プリシラ』だった
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