コロナ明けに変化すべき「スポーツ指導」の現場 ユニセフが提唱する「子どもの権利」とは何か

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III章はスポーツ庁鈴木大地長官、今季からレイズの筒香嘉智、プロサッカー選手の大滝麻未による座談会「スポーツには勝利より重要な価値がある」。2人のエリートアスリートは、指導者、親をいかに巻き込んでスポーツを変えていくかを語った。

野球をはじめとする日本のスポーツ指導者の多くは365日休みがない。常に選手と向き合っていて、指導法や技術について勉強したり、見聞を広めたりする余裕がないと言われる。この冊子はそういう指導者の視野を拡げるうえで重要だろう。

全国ほとんどすべての「部活」が自粛を余儀なくされているなかで、この本を手に取るのは、指導者や親が自らの指導を見直す良い転機になるのではないか。

指導者は自らに「子どもたちは何のためにスポーツをするのか」「自分は子どもに何を教えるのか」を問いかけるべき時が来ている。

自粛期間中に部活の練習が強行されていた

実は、コロナ禍の自粛中に、憂慮すべき事態も起こっている。4月7日に緊急事態宣言が発出された以降も、地方の私立高校の中には、自粛をほとんどせずに部員を集めて練習をさせていたところがあった。野球部の寮で合宿生活をさせて、平時と変わらず練習をさせていた。

学校活動は休止になっているから、練習し放題だった。もちろん、感染症対策は万全を期したとのことだが、そうした指導者からは「きれいごとでは勝てない」という声が上がっているようだ。結果的に、そうした野球部周辺からのクラスター(集団感染)は発生しなかったが、この問題は結果オーライではないだろう。

社会全体が活動を停止して、ウイルスの感染を食い止めようとしている中で、活動を続けることは、道義的、教育的な問題もあるし、子どもを危険な環境に置いたという見方もできる。指導者の見識が問われている。

指導者の中には、「自粛要請が解かれた新型コロナ明けには、以前と同じように野球ができるのではないか」と思っている人も少なからずいるかもしれない。

しかし、新型コロナ禍は、社会の仕組みを揺るがしている。経済環境は大きく変わるし、人々の行動も変容する。スポーツを取り巻く環境はより厳しくなるはずだ。そんな中で本当に必要なのは指導者が、「子どもの将来のことを第一に考えて指導すること」だ。

「ユニセフ『子どもの権利とスポーツの原則』実践のヒント」は、新しい時代のスポーツ指導の指針になるだろう。

(文中一部敬称略)

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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