「生活保護」コロナ禍の今こそ知ってほしい基本 生活に困ったら遠慮せずに活用を検討しよう

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コロナの影響で増加している生活困窮者はどうしたらいいか?(写真:takasuu/iStock)

新型コロナウイルスの感染拡大が経済に打撃を与えた影響で、多くの労働者が休業による減収や雇い止め、解雇などによって生活が立ち行かなくなっている。労働者に限らず自営業者、フリーランスで働いている個人事業主などでも収入が途絶えているケースが少なくなく、日々の生活への影響は深刻だ。

労働者の解雇、雇い止め問題については、「コロナ解雇・雇い止めが簡単にはできない根拠」(2020年5月29日配信)で解説した通り、労働組合などによる相談活動などの取り組みがさかんに行われているところだが、収入が減少し生活できなくなった場合にはセーフティーネットが必要だ。改めて注目を集めているのが、生活保護制度である。

そもそも生活保護制度とは

憲法25条1項は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」といわゆる「生存権」を権利として保障している。

これを受けた生活保護法1条は、「この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」と規定し、生存権保障(最低生活保障)が「国」の責任でなされなければならないことが明言されている(国家責任の原則)。

そして、生活保護法2条は、戦前の旧生活保護法に存在していた絶対的欠格条項(旧生活保護法2条は絶対的欠格条項として「能力があるにもかかわらず、勤労の意思のない者、勤労を怠る者、その他生計の維持に努めない者、素行不良な者」に対する生活保護の適用を明文で拒絶していた。)を廃止し、この法律の定める要件を満たす限り、生活保護法による保護を無差別平等に受けることができると定めている(無差別平等原理)。

この無差別平等の原理のキモは、過去を一切問うことなく、ただ、現在、生活に困窮しているという一事のみをもって生活保護が適用されなければならないということを生活保護の基本原理としてうたったものであり、憲法25条1項の理念を体現した規定である。

このように憲法25条1項に基づき生活保護法は、生活に困った人へ無差別平等に健康で文化的な最低限度の生活を保障しなければならないと国家に命じている。

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