しかし、若くて健康な人であってもすぐに就職して賃金を得ることができるわけではなく、仮に就職がうまくいったとしてもタイムラグはありその間の生活困窮状態はそのままになってしまうことから生活保護を受ける必要はなくならない。
生活保護法4条1項は、確かに資産や能力を「活用すること」を「要件」とはしているが、あくまでも「利用し得る」資産、能力でなければならないことから、現実に利用可能性がなく、直ちに利用して現金化できない資産、能力については、それがあるからといって生活保護を否定する理由にはならない。
また、親族による扶養も生活保護を受ける要件とはされていない(生活保護法4条2項は扶養義務者による扶養が「優先」すると定めてはいるが要件ではないので扶養できる親族がいたとしても生活保護の利用は妨げられない)。
厚生労働省の事務連絡
2020年4月7日、厚生労働省の生活保護行政を担当している社会・援護局保護課は、「新型コロナウイルス感染防止等のための生活保護業務等における対応について」と題する「事務連絡」を出した(厚労省のホームページで全文掲載中)。
この事務連絡によると、生活保護の申請などにあたり、面談等を行う場合の新型コロナウイルス対策について記載されているが、特筆すべきは、①申請にあたって調査すべき事項は最低限で足りることを明確に示し、さらには、②「働けるかどうか」「働ける場所があるか」(稼働能力活用)の判断は後回しでかまわないということを厚労省が明確に示した点である。
これは、ようするに「現在、生活に困っている人が申請をしたら、つべこべ言わずにとにかく生活保護を開始しなさい!」というメッセージを厚生労働省として発していると理解することが可能である。
これらの対応は、憲法25条1項、生活保護法の基本的考え方からすれば当然のことではあるが、この当然の対応を厚労省が今回の新型コロナウイルス問題ではっきりと明言した意味は大きい。
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