「生活保護」コロナ禍の今こそ知ってほしい基本 生活に困ったら遠慮せずに活用を検討しよう

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生活保護は、憲法に基づく「権利」として国家の責任で実施されなければならない生活保障の制度であり、その理念通りに運用されれば、極めて実効性の高い機動的なセーフティーネットとして機能する。

生活保護は、当然のことながら税金が原資とされるが、支給される生活保護費は、性質上、そのほとんどが消費として支出されることから、その経済効果も無視できない。

生活困窮者の中で生活保護を受けているのは2割

しかしながら、実際には、本来生活保護を受けることが可能な生活困窮者の中で実際に生活保護を申請し受給している者の割合(捕捉率)は2割程度と言われており、まだまだ生活保護制度が浸透していないのが実情である。

新型コロナウイルスによる経済への影響は深刻であり、さまざまな対策が検討されているところではあるが、既存の制度である生活保護の活用はもっと検討されてもよいと思われる。

以下に今回の「事務連絡」で重要と思われるところを抜粋しておく。

【参考引用】

「(1)申請相談について。生活保護の申請相談にあたっては、保護の申請意思を確認した上で、申請の意思がある方に対しては、生活保護の要否判定に直接必要な情報のみ聴取することとし、その他の保護の決定実施及び援助方針の策定に必要な情報については、後日電話等により聴取する等、面接時間が長時間にならないよう工夫されたい。また、対人距離を確保した上でマスクを着用する等、感染のリスクを最小限とするようにされたい。 なお、 「新型コロナウイルス感染防止等に関連した生活保護業務及び生活困窮者自立支援制度における留意点について」(令和2年3月10日厚生労働省社会・援護局保護課 地域福祉課生活困窮者自立支援室連名事務連絡。以下「事務連絡」という)の「3適切な保護の実施」にあるとおり、面接時の適切な対応(保護の申請権が侵害されないことはもとより、侵害していると疑われるような行為も厳に慎むべきこと等)、速やかな保護 決定等については、引き続き特に留意されたい 」

「(1)稼働能力の活用について。局長通知第4において、稼働能力を活用しているか否かについては、実際に稼働能力を活用する場を得ることができるか否かについても評価することとしているが、緊急事態措置の状況の中で新たに就労の場を探すこと自体が困難であるなどのやむを得ない場合は、緊急事態措置期間中、こうした判断を留保することができることとする 」
戸舘 圭之 弁護士

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とだて よしゆき / Yoshiyuki Todate
弁護士(第二東京弁護士会所属)。「ブラック企業」問題に取り組む弁護士が結集したブラック企業被害対策弁護団の副代表をつとめるなど労働事件に積極的に取り組んでいる。その他、民事事件、家事事件など一般事件を広く手掛ける傍ら著名な冤罪事件「袴田事件」の弁護人としても活動するなど刑事事件にも力を入れている。戸舘圭之法律事務所(http://www.todatelaw.jp/
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