このように生活保護制度は、生活に困窮した人にとってのよりどころとなるべき重要なセーフティーネットである。
ところが、実際に、生活保護を受けようと思って役所の窓口(福祉事務所)に行くと「まだ若いから働けるはずだ」「実家に援助してもらいなさい」「住所がないと受けられません」などと言われて追い返されることがしばしば生じている。
生活保護が受けられずに餓死に追い込まれた痛ましい事件なども過去には起きている。
生活保護を申請させてもらえずに窓口で追い返されることは「水際作戦」などと言われ、これまで弁護士や支援団体などから数多くの批判を浴びており、裁判などでも争われ行政側が敗訴する例もいくつか出されている。
「水際作戦」は明らかに違法な対応であるが、現実の生活保護行政では、しばしば違法に追い返される事例が後を絶たない。
加えて、「生活保護バッシング」などと言われる生活保護受給者を叩くネット上などでの言説から、生活保護に対するネガティブなイメージを持ってしまっている人も少なくない。
生活に困窮していても、生活保護を申請することを躊躇する人も少なからずいると思われる。
生活保護にまつわるよくある誤解
生活保護に関しては「病気で働けない状態にならないと受けられない」「住所がないと受けられない」「持ち家があると受けられない」「自動車を持っていると受けられない」「扶養できる親族がいれば受けられない」などといった言説が巷にあふれており、現に、行政の担当者もそのようにいう場合もある。
しかし、生活保護法上、これらは基本的に生活保護を受けられない理由にはならない。
生活保護は、現在、生活に困窮している者であればだれでも無差別平等に受けられるのであり、それは憲法25条1項が保障する権利である。
生活保護法上、住所があることは要件とされておらず、むしろ今現在いる場所にある福祉事務所で生活保護を申請し受給することが可能であると定められている(生活保護法19条1項2号「現在地保護」と言われている)。
したがって、住む場所がなく路上やネットカフェなどで寝泊まりをしているホームレス状態にある人についても、今いる場所(現在地)の福祉事務所で生活保護を申請することが可能である。
ちなみに、住居がない人が生活保護を利用する場合、アパート等への入居費用も生活保護費として支給される。これは生活保護法30条1項本文が「生活扶助は、被保護者の居宅にておいて行うものとする。」と居宅保護の原則を定めているからである。
生活保護法4条1項は「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と定めており、ここから「若くて働ける人」については生活保護を受けることができないのではないかと言われることもある。
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