院内感染だけでなく、施設内感染も多発していて、施設休業も相次いでいる(約900施設)。5月1日時点で全国の介護施設や高齢者住宅で70人死亡している(感染者479人)。実際はもっと多いかもしれない。事業所閉鎖をおそれて、自然死として扱っているケースもある。実際の現場からの声で耳にすることもある。
医療従事者、介護従事者は患者と濃厚接触せざるをえない。高齢者と接する機会の多い人たちは、症状の有無にかかわらず、定期的に検査をしたほうがいい。万が一PCRで陽性となれば、無症状であっても休養する。陰性化すれば業務に戻ればよい。
職員800人中80人がPCR陽性であった永寿総合病院のケースでも、有症状者は数人であり、全員が職場復帰していると聞く。短期的には戦力はダウンするが、決して喪失するわけではないということだ。
医療・介護従事者に定期的な検査をする必要性は?
6月1日、訪問看護やケアマネの事業所に声をかけ、緊急講座を行った。事前アンケートで、定期検査の必要性を問うたところ「是非、検査をしてほしい」という希望や「陽性だった場合に、他職員に迷惑をかけるから検査したくない」という本音を聞くことができた。
潜在的に多くの従事者が「感染しているかもしれない」「感染させるかもしれない」という恐怖を抱えながら、業務を行っているのだ。講座後、定期検査を要望する人が大半となった。
無症状の職員に病院内で検体採取することは、それほど困難ではないはずだ。通常検査機器は施設内にないだろうから、解析のみ外注すればいい。パラメディカルにも定期的に検査することで安心して業務をしてもらう。患者も安心だ。風俗産業で働く人たちも感染チェックを定期的に行っている。自分と客の身を守るために必要なのは同じだし、参考にできるだろう。
当院でも、5月中旬に職員全員にPCR検査を施行した。全員「陰性」であった。掲示したところ、患者からも好評だった。近日中に全員抗体検査も行う予定である(参考論文「Universal weekly testing as the UK COVID-19 lockdown exit strategy」 The Lancet 2020年5月2日)。
国内の新型コロナの全感染者の6分の1以上が医療・介護・障害福祉セクターで生じているとされている。感染制御を含め、介護従事者の医学知識は十分とは限らない。介護従事者を全力で守る必要がある。そのためには定期検査が重要だ。高齢化が世界一進んでいる日本では介護崩壊は国家沈没と同義だ (「Presymptomatic SARS-CoV-2 Infections and Transmission in a Skilled Nursing Facility 」NEJM 2020年4月24日)。
全国の介護事業所数は約5万~6万戸で、これは歯科クリニックの数とほぼ同数だ。厚労省が「歯科医によるPCR検査拡充」を発表した。歯科医が検体採取することは、技術的には十分可能だと考える。ただし、対象は無症状の介護従事者に限定する。ほとんどが、陰性確認となるはずだ。「業務許可」というお墨付きを与える役割だ。当然歯科医の収入にもなる。医師との連携が深まるはずだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら